東南アジア一帯で不動産投資する日本人には、「都心一等地」という宣伝用のキャッチフレーズが多用されている。たとえば、マレーシアのクアラルンプールなら、都心部のKLCCがこれに該当する。
しかし、肝心なのは、誰が住むかという問題だ。マレーシア人は果たしてKLCCに住みたいと思うのか、調べたら良い。結果的にその類の高級物件に住むのは外国人駐在員中心となる。では、駐在員が増えるのか?駐在員が増えることは、当該国の高度経済成長に伴う外資進出の増加を前提とする。
マレーシアは中途半端な国だ。労働集約型は人件費でベトナムに負けているし、ハイテクはシンガポールに太刀打ちできないでいる。マハティールがマレー半島新幹線工事にストップをかけたのも、マレーシアという国は目覚しい経済発展が見込めないからだ。これからも、大して変わらないだろう。2019年度海外駐在員生活費ランキング(マーサー社)によれば、クアラルンプールの生活費はアジア地域でほぼ最下位の141位にランクインされている。これも立派な裏づけだろう。
とにかく物価が安い。だから、定年退職者に人気があり、年々移住先としてダントツの1位に輝いている。定年退職者は家賃の高い都心部に住む必要はまったくない。それよりも家賃の安い、環境の良い郊外物件に住むだろう。
マレーシアは発展しない。やる気のあるマレーシア人はアメリカやシンガポールに向かっている。誰もが賃金の安い国内にとどまろうとしない。米中貿易戦争で中国から追い出された企業は、労働集約型はベトナム、ハイテク型は台湾やそれぞれの本国へ移転する。マレーシアは中途半端すぎるからだ(だからこそ、住みやすいのだ)
不動産の話に戻すが、アジア圏、新興国の不動産投資で利益を叩き出すには、以下の諸条件が必要だ――。
① 経済テイクオフの直前に参入すること(ただし、テイクオフ失敗の国はハズレ)。
② 外国人投資に諸制限がなければ、現地庶民や中産階級の需要がもっとも旺盛なエコノミータイプ物件(良い農地も狙い目)に投資すること。
③ 高級物件案件なら、今後しばらく外国投資が増加傾向にある(外国人駐在員の実需がある)国であること。
④ 国土が狭く、あるいは人口密度の高い国であること。
⑤ 不動産市場の過剰競争が少ないこと。
⑥ キャピタルゲイン、インカムゲインのどちらか一方が期待できること。
⑦ 売却益・代金の海外送金に法的、実務的支障がないこと。
⑧ 投資資金は余裕資金であること。
⑨ 当該地域の政治や法制度が安定していること。
⑩ その他条件。
上記10項目のうち、何項目が当てはまるか、相互関係のバランスはどうか、などなどと吟味しながら最終的に判断する。そうした冷静な姿勢が必要だろう。売買手数料目当ての仲介業者や、物件捌き・資金入手目的のデベロッパーの甘言に惑わされないようにしよう。





