新型コロナウイルス。中国では状況が落ち着きを見せ始めた。本当に、好転しているのだろうか。好転するなら、3月上旬の「両会」(全人代と全国政治協商会議)はなぜ異例の延期になるのか?説明がつかない。
在中日系企業は操業再開で四苦八苦している。地方から戻ってくる従業員が入城禁止や隔離を食らって職場復帰ができていない。それだけでなく、資材・部品の供給、川上の問題で操業が完全再開できなかったり、出荷にあたっては寸断された道路や物流網で輸送がストップしていたりする。要するにサプライチェーンが機能不全に陥っているわけだ。
この中国発のサプライチェーンが壊れたまま、数週間や1か月、2か月が経過すると、海外業者は必ず代替供給網の構築に乗り出す。これを中国がいちばん恐れている。いったん代替供給網が出来上がると、生産は二度と中国に戻ってこない。致命的かつ崩壊的な打撃で中国経済は終了するかもしれないからだ。
このため、どんなに疫病が広がっていても、とにかく操業を再開しなければならない。逆算してみると、分かりやすい。サプライチェーンは3か月も待てないだろうから、4月がデッドライン。だとすれば、WHOから緊急事態宣言をはずしてもらうためにも、3月中下旬までに危機に終止符を打たなければならない。遅くても2月下旬から感染者・死亡者の数字の改善傾向が欠かせない。
これに合わせて現に数字が下降傾向に動き出している。概ね計算が合っている。果たして実態に即した数字の改善であるかどうかは神にしか知らない。
操業再開はこれ以上待てないわけだから、北京政府は号令を発する。一方では、地方政府が疫病の広がりを恐れて独自の遮断・隔離措置を打ち出している。つまり、北京の意思と地方の意思が相反し、矛盾している。業務再開といいつつも、各地方では外地人員の入城阻止や隔離で逆の行動を取っている。上意下達どころか、下剋上現象が起きている。
それでも操業再開が進んでいる。2月10日あたりからスタートした操業再開は新たな拡散リスクを孕んでいることは誰の目にも明らかだ。むしろ、賭けである。この賭けに踏み切った北京政府にとってみれば、勝った場合の利益は当局者や特権階級の手に入るが、負けても被害者は地方の労働者や一般庶民であるから、大した問題にならない。国民の命で大きな、大きな賭けに出たわけだ。
14日間(もっと長いケースもあるようだが)の発症潜伏期を考えると、操業再開に伴う拡散ピークが出現するなら、2月下旬から3月上旬あたりではないかと推定される。それがぴったり、「両会」の開催期間とかぶる。都合が悪すぎるので、「両会」の開催を遅らせるしかない。
――この文脈に裏付けられた仮説である。そういう意味で2月末あたりから、状況が見えてくるだろう。