バリ日記(3)―我が輩はリスである

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23101私の食事を横取りするバリ島のリス

 我が輩は、リスである。

 生息地はインドネシア・バリ島の森だが、ここ数年島の海岸部に大挙移住を始めた。その理由は、海岸沿いにたくさんのリゾートホテルができ、我が輩の餌が森よりもはるかに豊富になったからだ。

 ビーチサイドで寛ぐあの人間様たちは、我が輩を可愛がり、様々な食べ物を与えてくれるのである。我が輩がもともと食べていた木の実よりも美味しいものがこの世にたくさん存在していることを知った。これじゃ、我が輩は、もはや森に戻ることができなくなった。いまは、こうしてビーチの木々に棲み付き、贅沢な生活を送っているのである。

23101_2木から降りて直接キャッチ!
23101b_2今度新聞の上、警戒しながら・・・

 あっ、来た、来た。あのデブの人間様が、我が輩大好きなフライドポテトを食べているのではないか、早速、もらいに行ってくるね。
・・・
 その人間様は、私だった。

 ビーチサイドで昼食を食べていると、リスが食べ物を狙って木から降りてくる。フライドポテトをビーチチェアに置くと、すぐに取っていく。リスの体の割りにポテトが大きく、両手で抱っこしてパクパク食べる光景はとてもこっけいで可愛い。

 で、ちょっとした実験をしてみた。何回か、直にビーチシェアに置いていたフライドポテトを、今度新聞のうえに置くようにした。すると、状況が一変。まっすぐ木から降りてきて取っていったリスが戸惑った。どうやら、新聞に仕掛けがないかと警戒していたようだ。何回も何回も新聞をじっくり観察していても、躊躇って手を出す決心が付かなかった。

23101_3
23101b_3 ビーチチェアの隅々をチェック、確認OK!

 そのとき、ライバルが出現。鳩がフライドポテトに近寄ってきた。横取りされるリスクを察知したリスはある動きに出た。木からビーチチェアに飛びついた。しかし、すぐにフライドポテトを取らなかった。チェアの縁に沿ってぐるっと一週回って隅々までチェックを入れた。仕掛けのないことを確認できた時点で、スッと手早く新聞からポテトを持ち去った。

 状況の変化に常に警戒心を持ちながらも、不作為を継続すれば、チャンスを逃してしまう。かといって決して無謀な行動をとらずに、リスク回避策をしっかりと打って獲物をゲット。リスの戦略決断とリスク管理は立派だった。

23101_4チェックオーライ、新聞の上からポテトをキャッチ!

 企業の経営も同じである。いかなる作為にも、不作為にも、異なる種だがリスクはつき物だ。無謀な行為は危ないが、不作為をひたすら続ける臆病者も同様にチャンスを失い、機会損失コストを負担しなければならない。大胆さと慎重さ、緻密な情報収集と果断な決断、われわれ企業は、リスに学ぶものがたくさんあるように思えた。

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