私はこうして会社を辞めました(49)―白、黒そしてグレー

<前回>
(敬称略)

 風見が木津にメッセージを託し、9年前古田部長の暗黙の意思表示を受けてあの問題の「十か条」を私に手渡したことを認め、謝罪した。しかし、その直後、私がその件を関係者匿名で自分のブログに書き込んだ矢先、風見は突然と姿勢を一転させ、「古田部長の指示はなかった」と関連事実を否定し、ブログ掲載の中止を求めてきた。

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 もしや、木津のメッセージに伝達上のミスがあったのではないかと私が、木津に電話して念を押したが、木津は、間違いないと言った。大体の状況が見えてきたので、その辺の「言った、言ってない」の水掛け論をやめにして、真実はどうなのかを探ってみよう。

 風見は、ロイターを辞めた今日、ロイターと取引のある某会社に勤めている。しかも、あの古田部長がロイター側の責任者になっているという。なるほど、利害関係が絡んでいる以上、古田部長は依然とアンタッチャブルな存在になっている。風見から私に送られてきた最初のメールに、すべて「あの方」という名称を使い、「古田」という名に触れることさえ恐れていたようだった。「古田王国」の勢力の強大さが如実に語られている。

 「絶対的封建主義の古田王国の主」

 これは、後日風見がメールに自ら使った表現だった。当時NP部内の状況について、風見は、「ロイターの自由な社風とまったく異なる古田部長の姿勢に納得せず、新人が何人も会社を辞めていった」と克明に描き、最後に、「・・・私自身も、古田封建王国の被害者だ」と内心を吐露した。

 しかし、肝心な「十か条」の作成は、いったい誰の意図なのか、私は決して諦めない。言葉を濁していた風見は、最終的に「すべて私が自分の意思でやった」と完全に姿勢を切り替えた。

 もう、それ以上追及しないことにした。状況が明白だ。風見は、一サラリーマンとして家族の生計を立てていく必要があることは、私自分もサラリーマン経験者であるだけに、よくよく知っている。白黒をはっきりつけるよりも、グレーはグレーのままで良いという風見はサラリーマン生涯を転々と続けているし、グレーを容認せず、白黒の世界を求める私は、会社を辞めるしかなかったのだった。それぞれの価値観と生き方であって、正しいとか間違いとかの問題は存在しないし、むしろ、互いに認め合い、尊重し合うべきだと認識している。

 一方では風見はこのブログで古田部長の敏感な神経に触れることを懸念しているようだ。仮に、このブログを古田部長が読んだとしても、彼はそれなりの人格者でもあるので、決して個人的な感情に左右され、会社間のビジネスに影響を及ぼすことはないと信じている。

<次回>