日系企業の経費削減(2)~出張航空券を倍の値段で買う

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 コスト削減の話の続き、上海にある日系企業A社の話。

 この会社の出張用の航空券は、すべて、日本本社経由で一括手配購入している。大口顧客として一括購入なら、一般の格安券よりさらに安いのではないかと思いきや、何と、すべて正規価格で購入しているという。いまだに、10数万円の正規料金を払って、出張者が上海・東京を往復している。

 上海・東京の格安往復券なら、4万円~7万円が相場だ。A社が倍以上の料金を払っている計算になる。月間10人の出張者で日中間1往復するだけでも、年間800万円以上の無駄遣い、人民元換算で60万元、中国人スタッフで8人~10人も雇えてしまう。小型現地拠点1社分の年間人件費総額に相当する。同じ飛行機に乗っての航空運賃で、この60万元は、何ら付加価値もない、まったく無意味な支出だ。経費削減するなら、まず、この種の無意味な支出から着手すべきだろう。

 さらに、恐るべき話がある。このA社は、国際線だけならもだしも、中国の国内線チケットまで、発券可能なものなら、日本発券になっている。もちろん、すべて正規料金だ。

 私は、出張なら満席でない限り、すべてエコノミークラス。しかも、なるべく、割引率の高い旅行代理店を使う。ここ数年は、インターネットの「携程(Ctrip)」と「芸龍(eLong)」の二社に絞り込んで、比較の上で安い方を購入している。

 航空券を正規料金で購入することは、まず考えられない。まして、正規料金国内線チケットの日本発券となると、あまりにも馬鹿馬鹿しい。さらに馬鹿馬鹿しい話がある。日本発券の中国国内線チケットは、メジャー路線に限られている。一部の地方都市へは、上海から便利な直行便が飛んでいるにもかかわらず、日本では予約・発券できない。すると、上海から深圳や成都など主要地方都市経由便の航空券を日本で発券する。料金は当然2倍、3倍に跳ね上がる。しかも、乗り継ぎに時間がかかったりし、業務出張に大きな支障をきたしている。現地の出張者や総務担当者から度重なる苦情が噴出しているにもかかわらず、いまだに、日本本社の一括手配になっているという。

 理由は、恐らく、日本本社とどこかの旅行会社とが、グループ企業の一括手配契約をしているところにあるだろう。経費削減と叫ばれる一方、極端の事例だが、このような不合理な経費の使い方が現に存在している。

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