ラリー・ジョンソン氏「ウクライナ軍は敗退、残るは掃討作戦だ」

ラリー・ジョンソン氏取材「ウクライナ軍は敗退した、残るは掃討作戦だ」(2022年3月22日付、ssanews.com)(抄訳)

ラリー・ジョンソン氏略歴
CIAと国務省のテロ対策室に勤務。BERG Associates創設者・経営パートナー。24年間、米軍の特殊作戦部隊に訓練を提供。右翼からも左翼からも悪口を言われているが、それはつまり、何か正しいことをしているに違いない。氏の分析とコメントは、ブログ、https://sonar21.com/ でも閲覧可。

<質問1>なぜロシアがウクライナ戦争に勝っていると思うのか?

 ロシアの軍事作戦が始まってから24時間以内に、ウクライナの地上レーダー迎撃能力はすべて一掃された。レーダーがなければ、ウクライナ空軍は空対空迎撃の能力を失う。この3週間の間に、ロシアはウクライナ上空に事実上の飛行禁止区域を設定した。

 キエフ侵攻についてだが、ナチスはキエフに到着するまで7週間、キエフ制圧にさらに7週間を要した。いわゆるアメリカの軍事専門家の多くは、ロシアは泥沼にはまったと主張した。露軍がキエフの北郊外に1週間以上も滞留したことは、ウクライナの重要な軍事作戦を行う能力が消滅したことを証明している。そうでなければ、その車列は大規模な破壊に遭遇していただろう。空からも簡単にその車列を破壊できたはずである。しかし、それは実現しなかった。ウクライナ軍が実行可能な巡航ミサイルの能力を持っていたなら、膠着状態にあるはずのロシアの車列に地獄のようなミサイルの雨を降らせただろう。いちいち待ち伏せする歩兵部隊を使うことはしなかっただろう。

 露軍の攻撃の規模と範囲は驚くべきものだ。彼らは3週間で、イギリスの国土よりも広い領土を占領した。その後、主要都市や軍事施設に標的を定めて攻撃を行った。ウクライナの連隊や旅団規模の部隊が、同等のロシア軍部隊を攻撃して打ち破った例は一度もない。その代わりに、ロシア軍はウクライナ軍をズタズタに分割し、通信網を遮断した。ロシア軍はマリウポりの支配を強化し、黒海のすべてのアクセスを確保した。ウクライナはすでに南部と北部で分断されている。

 2003年のイラク戦争では、米国ははるかに劣る、低能力の敵軍と戦いながら、これだけの領土を獲得できなかった。どちらかといえば、このロシアの作戦は、米軍と政治指導者を脅かすものである。

<質問2>なぜメディアは、ウクライナ国民に、ロシアとの戦争で勝利できると信じ込ませようとしているのか?もしあなたの言うことが正しいなら、露軍と戦うために派遣されている民間人は皆、勝てない戦争で死んでいることになる。なぜメディアは、こんな重大なことで人々を騙そうとするのか、理解できない。この問題について、お考えだろうか?

 これは無知と怠惰の組み合わせだ。本当の報道をするよりも、大多数のメディア(紙媒体も電子媒体も)とビッグ・テックが大規模なプロパガンダ・キャンペーンを支持しているのだ。ジョージ・W・ブッシュがヒトラー(悪者)だったときのことも、ドナルド・トランプがヒトラー(悪者)だったことも鮮明に覚えている。そして今、私たちには新しいヒトラー(悪者)、ウラジミール・プーチンがいる。これは飽き飽きだ、下手な脚本だ。合理的に疑問に思う人、勇気のある人は誰でも、すぐに気づくはずだ。

<質問3>先週、ダグラス・マクレガー大佐がタッカー・カールソン・ショーにゲスト出演した。彼の戦争観はあなたと 酷似している。ウクライナはアメリカがロシアに対して代理戦争を行うための中継地として利用されているということに同意するか?

 私は氏の意見に反対だ。バイデン政権には、このような戦略的な観点から考え、計画できるほど賢者はいない。この7年間は、NATOの現状維持のためのマンネリ化した惰性的なものだった。つまり、NATOとワシントンは、反発を招くことなくロシアの東部国境まで拡大することができると考えていただろう。

 ワシントンには絶望的な空気が漂っている。バイデン政権は、ロシアを制裁するほか、中国やインド、サウジアラビアを叩こうとしている。バイデン一味はロシアのあらゆるもの、あらゆる人々を悪魔化しようとしたことが致命的な間違いだった。むしろ、これはロシア国民を団結させ、長期戦の準備における決意を固めるなものだ。

 ロシアは経済制裁で屈服するだろうという読みは、誤算だ。真逆である。ロシアは自給自足で、輸入に頼っているわけではない。ロシアの輸出は西側諸国の経済的繁栄に不可欠である。小麦や天然ガス、石油、パラジウム、完成品ニッケルなどの主要鉱物を欧米向けの輸出を禁止した、欧米経済は壊滅的な打撃を受けるだろう。そして、この制裁によって、米ドルの国際基軸通貨の地位が失われる可能性も出てきている。

<質問4>2007年のミュンヘンでの演説以来、プーチンは「グローバルな安全保障の構造」に対して不満を持ち続けている。ウクライナでは、このような厄介な安全保障問題が、本格的な戦争に発展する可能性があることも知っている。12月にプーチンはロシアの安全保障に関する要求をいくつか出したが、バイデン政権はそれを受け流し、決して応じようとはしなかった。プーチンは、NATOの拡大にはウクライナ(加盟)を含めないこと、ルーマニアやポーランドに核ミサイルシステムを配備しないことを書面で確約することを求めていた。プーチンの要求はどう思うか?

 プーチンの要求は極めて合理的だ。問題は、99%のアメリカ人が、NATOと米国が過去7年間に行った軍事的挑発のようなものを知らないということだ。国民はいつも軍事演習は「防衛的」だと告げられてきた。それは真実ではない。バイデンがキューバ、ベネズエラ、メキシコにロシアが同等の武器を配置することを許可するなら、プーチンはポーランドとルーマニアにアメリカの核ミサイルシステムの配置も許可するだろう。このような対等性の観点から見ると、プーチンの要求はクレイジーでも不合理でもないことが理解できるだろう。

<質問5>ロシアのメディアは、ロシアの「高精度空中発射」ミサイルが西ウクライナの施設を攻撃し、「100人以上の地元部隊と外国人傭兵を殺害した」と報じている。どうやら、特殊作戦訓練センターはポーランド国境からわずか15マイルのところにあるオヴルヒの町の近くにあったようだ。この事件について、ロシアはNATOにどんなメッセージを送ろうとしたのだろうか?

 この1週間の西ウクライナでのロシアの軍事攻撃は、NATOの当局者に衝撃を与え、警戒させている。最初の一撃は、3月13日の日曜日、ウクライナのヤヴォリブで起こった。ロシアは数発のミサイルで基地を攻撃し、中には極超音速ミサイルもあったとされる。アメリカやイギリスの軍人や諜報員を含む200人以上が死亡し、数百人が負傷した。多くの人が四肢切断などの致命的な傷を負い、入院している。しかし、NATOと西側メディアは、この災害についてほとんど関心を示さず、報道していない。プーチンは非常に明確なメッセージを送っている。ウクライナにいるNATO軍は戦闘員としてみなされ、対処されることになると。

<質問6>ウクライナのゼレンスキー大統領は、西側メディアから「戦時中のリーダー」「現代のウィンストン・チャーチル」として称賛されている。メディアが読者に伝えていないのは、ゼレンスキーがウクライナの脆弱な民主主義制度を損ないながら、自らの権力支配を強化するために多くの手段を講じてきたということだ。例えば、ゼレンスキーは「11の野党が所有する報道機関を禁止」し、ウクライナ最大の野党であるヴィクトル・メドベチュク党首を「テロ資金調達」のインチキな容疑で出馬禁止にしようとしたのである。これは、民主主義に真剣に取り組んでいる指導者の行動ではない。ゼレンスキーについてどう思うか?彼は本当にメディアが言うような「愛国的指導者」なのだろうか?

 ゼレンスキーはコメディアンであり俳優だ。私の見立てでは、あまり筋の良いものではない。欧米諸国は、彼がユダヤ人であることを、ネオナチ(第二次世界大戦でナチスと共に戦ったウクライナのヴァッフェンSS部隊の功績をいまだに讃えている本物のナチス)の集団から目をそらすために利用しているのである。事実は明らかだ。彼は野党の政党を禁止し、野党のメディアを閉鎖している。それが「民主主義」の新しい定義といえるのだろうか。

<質問7>これはどのように終わるのですか?アラバマ・ムーンのサイトに「What Will Be The Geographic End State Of The War In Ukraine」と題する優れた投稿がある。この投稿の著者であるバーナード氏は、ウクライナは最終的にドニエプル川沿いと、ロシア系住民が大多数を占める国土が分割されるだろうと考えているようである。「この場合、ウクライナの黒海へのアクセスはなくなり、ロシアの保護下にあるモルダヴィア離脱のトランスニストリアへの陸橋が出来る。最終的に残されたウクライナは、内陸の農業国になり、武装解除され、貧しく、すぐにでもロシアの新たな脅威とならないだろう。プーチンは、ロシアの安全保障を強化し、敵対行為を終わらせるために、ウクライナ領土問題の解決を押し付けるのだろうか、それとも別のシナリオの可能性が高いのだろうか?

 ムーン氏に同意する。プーチンの第一の目的は、ロシアを外国の脅威から守り、西側諸国との対峙を実現することだ。ロシアは独立した主権者になるための物理的資源を持っており、そのビジョンを実現する過程にある。

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