上海で自殺した日本人駐在員、日本本社共和国の罪

 「じゃ、立花さん、また来週ね、食事会を楽しみにしてる」、翌週の食事会を約束しながら、Kさんと別れた2日後、訃報が入った。

 Kさんは、上海・古北の社宅で首を吊って自殺した。私と別れた翌日の夜だった。某中堅日系企業の日本人駐在員、まだ30代の若さ・・・

 4年前の寒い冬の出来事だった。「他殺じゃないか、だって、翌週の食事会を約束しながら、自殺するか」、しかし、家族や友人宛、自筆の遺書が十数点も見つかっている。明らかな自殺だった。

 うつ病。

 何の前触れもなく、突然とこの世を去ってしまったKさんのこと、私の心にいつまでも、翳りが残っている。上海に寒い冬が訪れるたび、Kさんのことを思い出さずにいられない。何とか、事前に手を打てなかったのだろうか。私が、Kさんと食事会の約束をしながら、もし、少しでも様子の異変に気づいていたら・・・と悔しくて・・・

 非正式の消息筋によると、一昨年あたりから、上海での日本人の自殺者数はすでに二桁に上っているという。領事館に数字の公開を求めたいくらいだ。専門家の話では、中国で日本人が自殺する原因の一位は、「仕事の悩み」だそうだ。

 「中国での仕事は、大変だが、それは覚悟のうえで来た。いくら辛くても耐えられる。しかし、この辛さを理解してくれない日本の本社には、耐えられない。理不尽な要求をあれもこれも突き付けられて、発狂しそうだ」

 こう打ち明けてくれる駐在員もいる。

 「中華人民共和国」と「日本本社共和国」の間に挟まれている人たち、こう表現する人もいる。ストレスがどんどん溜まっていく・・・なかに、うつ病やうつ病の候補軍はどのくらいいるのだろうか。

 日本人駐在員のメンタルヘルスに、企業はどこまで関心を持っているのか?危機感を呼びかけたい。

 来る12月18日、日本国内で企業メンタルヘルスの第一人者、渡部卓先生を特別ゲストに迎えて、上海で「渡部卓先生・立花聡合同セミナー」(有料)を開催する。関心のある方、是非ご参加ください。

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