ウクライナ戦争の行方、日本は敗色濃厚

● 露米欧の秘密交渉と裏取引

 マリウポリ製鉄所で捕獲された400名(人数は中国筋情報)の外国人は、露中メディアにも報じられていない。顔も出していない。この人たちのなかに、一般外国人志願兵や傭兵以外に、大物の上位指揮官も含まれている可能性が高い。

 表に出てこないことは何を意味するか。厳重な防衛措置によって、ロシア本国または支配領土のどこかに秘密輸送されたと考えていいだろう。つまり、露米欧の秘密交渉と裏取引に付されるためだ。であれば、米欧によるウクライナ支援は実質的に空洞化せざるを得ない。

 ゼレンスキーには個人的にお金を握らせ、黙らせればいい。ゼレンスキーもマリウポリのアゾフ隊員たち同様、いずれ「任務完了」とされる。その延長線上にウクライナ国土の分割を含めて戦争はフェイドアウトする可能性もある。繰り返してきたように、ウクライナ応援とか、プーチン打倒とか、国際政治には「善悪」はない。あるのは「利益」のみだ。

 大衆の情緒は、プロパガンダに都合の良い燃料にしかなり得ない。目を覚ましたほうがいい。Don’t be naive!

● ロシアの優勢とシナリオ

 この数日、西側メディアのウクライナ報道は、急にトーンダウンしているし、本数も著しく減っている。ロシアの優勢が徐々に浮上し始めている。

 開戦して3か月経過した現在、ロシアが占領したウクライナの領土面積は、「本州+四国」にあたる。これからの展開を予想し、半年で、1つの日本に相当する領土を占領することになる。どう考えても、ロシアの負けとは言えないはずだ。

 面積だけではない。ロシアの占領地は、ウクライナ経済を支える工業地帯と海上アクセスである。ロシアは、6~7月末までにドンバスの全域確保、秋までにムィコラーイウ、オデーサ(オデッサ)の占領を完了すれば、大勝利。それによって、ウクライナは海上輸出ルートすらもたない貧しい内陸農業国に変身する。

 ロシアとルーマニアとの国境を確保することは、ロシアがNATOとの緩衝地帯の設置を主体的、能動的に放棄することをも意味する。その文脈からすれば、フィンランドのNATO加盟もさほど驚くべきことではなくなる。すでに、米国の戦略は、欧州からアジアに移行しつつある。

● 米国はアジアにやってくる

 米軍アフガニスタン撤退によるカブール陥落は米外交史上最大の汚点。これに続き、ウクライナでも予定を狂わせたら、バイデンはもう終わり。2024年米大統領選での続投に賭けて、トランプと戦うには、中国制圧という最後のカードしか残されていない。いよいよ、バイデンの戦略は、アジア、中国に移行する。

 台湾メディアがある内部流出動画を報じた。5月12~13日開催された米国とASEANの特別サミットにおけるベトナム政府代表団の「楽屋対話」。ファム・ミン・チン越首相は身内にこう言い放った。

台湾メディアによる内部流出動画の報道

 「俺の観点を(バイデンに)はっきり言っただけさ。何が怖い?アホか、アメリカなんか怖くねぇよ。ウクライナ戦争は、アメリカが作り出したんじゃねぇかよ」

 上品とはいえないこのセリフ。アメリカを負かした偉大な国ベトナムとしては、一貫した姿勢(本音)といえよう。いかにも強か。バイデンのアジア戦略は、難航が予想される。アセアンの国々はEUよりもイデオロギーの共有が薄く、あくまでも実利先行だから、扱いにくい。

● 中国と戦えるのか?

 バイデンのアジア戦略というよりも、対中戦略。ウクライナ戦争ならEUだが、対中なら日本が最前線に立たされる。素朴な質問だが、日本は対露制裁を快諾できても、対中制裁も同じようにできるのか?

 中国共産党政権の統治を、単なる独裁として、日本を含む西側がいささか見下している。とんでもない。中国指導部は古来の哲学や兵法から、帝王学、西洋ではマルクスやヘーゲル、近代では毛沢東理論までしっかりした思考や論理の基盤を持っている。票の数に依存する西側の浅薄な仕組みとわけが違う。

 5月21日投開票のオーストラリア総選挙で、野党・労働党が勝利し、2013年以来の政権交代となった。アルバニージー党首は首相に就任し、東京で24日開かれる日米豪印4か国「クアッド」の首脳会合に出席する。

 対露制裁の一件でインドの離反姿勢がすでに見られた。今度、オーストラリア新政権の出方が注目される。印豪の姿勢次第で「クアッド」の枠組みが崩れると、残されるのは「良い子」の日本だけだ。ウクライナ戦争で米国と歩調を合わせて日本は完全にロシアを敵に回した。今度、中国をも敵に回すとなると、無謀としか言いようがない。

 日本は米国からの「負託」を一身に担って中国と戦えるのか?