マレー半島北部の旅(9)~番外編、イポーの道草と食料仕入れ

<前回>

 マレー半島北部の旅には、ある楽しみがある。帰る途中でイポーに立ち寄り、美味しい道草が食えるからだ。今回もこのパターンを踏襲する。6月5日(日)、早朝7時30分にアロースターを出発し、ペナン(大陸側)を経由し、10時過ぎにイポー到着。昼食まではまだ時間があるものの、休日のためすでに大混雑状態。

 「富山茶楼」の店頭は席待ちの客でいっぱい。番号札をもらって待つこと20分、ようやく席に案内される。休日の飲茶は、華人家族一家団欒のひと時である。ブランチ感覚でゆっくりお茶を啜って点心をつまむ。あの騒めきといい無秩序さといい、なんと微笑ましい光景だ。

 たらふく点心を食べたら、食料の仕入れだ。毎回決まっている。まず専門店「新揚威」の焼鴨(ローストダック)。この店のダックは3種類ある――普通焼き、当帰焼きとスモーク(燻製)焼き。今日は好物のスモークが売り切れで、普通焼を2羽包んでもらった。

 ローストダックといえば、香港。しかし、ここマレーシアのダックは決して香港に負けていない。何と言っても、香港よりは全然安い(3分の1かな)。梅ソースをつけてダックどんぶりにして頬張ったら、天国に上る。

 最後に、「宴瓊林(Aun Kheng Lim)塩焗鶏専門店」に車を横付けし、名物のイポー塩鶏を5羽購入。

 中国語「塩焗鶏」の「焗」という漢字は、通常「蒸し焼き」に訳されているが、必ずしも適切とはいえない。特に客家料理によく見られるが、蒸気を媒介として、出汁や塩漬けされた半熟の食材(「塩焗鶏」の場合、塩漬け)を加熱して仕上げる調理法だ。

 塩と熱。もっともシンプルな調理法から出来上がったこの一品は、とにかく食材、鶏の持ち味が勝負。鶏の皮下には余分な脂肪がない。加熱しても脂がボタボタ落ちないし、肉の臭いもまったくない。皮は綺麗に焼き上がり、身離れがよい。程よく引き締まった肉はパサパサせず、歯ごたえが抜群に良い。

 白酒にも紹興酒にも相性がいい。帰宅後の楽しみである。

<終わり>