コタキナバル(4)~豪快美味、イノシシ焼肉

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 知る人ぞ知る。キナバル山には、イノシシ肉(Sinalou Bakas)の焼肉店が数店舗存在している。というと、キナバル山中にイノシシが出没しているかというと、そうではない。

 実は、イノシシはラハッダトゥー(Lahad Datu)の山間部に生息している。ラハッダトゥーはタワウ(Tawau)北部の幹線道路沿いに位置している。ボルネオ島南部のタワウ一帯は水産物が豊富だが、生活物資はコタキナバルからの物流に頼っている。タワウに物資を運んだトラックは空っぽで戻るのがもったいないので、ラハッダトゥーでイノシシ肉を積み込んで、コタキナバル近辺に降ろすわけだ。非常に合理的なシステムである。

 イノシシ肉は、弾力があって旨味の濃いお肉だ。特に脂身はとろけるようでありながらしつこさ、脂っぽさを感じさせない。ぼたん鍋をはじめとするイノシシ料理は、日本でも珍しい部類でふだん目にする機会が少ない。どうやら、匂いが苦手という人もいるようだが、私は何ら違和感もなく、美味しくいただくのである。羊肉もまた然り。

 ガイドが案内してくれたのは、「Himbaan Bongol Sinalou Bakas」というイノシシ焼肉店。サービスも何もない店だが、豪快でうまい。昼過ぎに入店したものの、ほぼ満席。ほとんどマレーシア人客。観光途中で立ち寄る家族やグループも多く、1皿や2皿を食べてさっと引き上げる。

 しかし、私たちのグループはお酒まで持ち込んで1時間半ほど粘る。肉はたれ焼と塩焼きの2種類、内臓系も焼かせてゆっくりと昼飲みしながら味わう。量がかなりあるので、ついに食べきれずに持ち帰り。次回は鍋を用意させて、ぼたん鍋にしようかと、2泊3日のキナバル山滞在の旅を企画し始めた。

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