「欲求」の正体を知れば、SNSの儲け方も一目瞭然

 人間には欲求がつきもの。よく知られているマズローの欲求5段階説以外に、欲求は次のようにも分類できる。

 金銭、美食、異性、贅沢に対する欲求=商人的欲求
 成功、勝利、名声、地位に対する欲求=軍人的欲求
 知恵、理性、知性、悟性に対する欲求=哲人的欲求

 フェイスブック等SNSのビジネスモデルは、基本的に人の欲求を利用している。欲求は自律によって制御されている。誰かに強要されることなく、人々は自らSNSに熱中し長い時間(貴重な資源)を投入する。すると、大量の人が頻繁に出入れし滞留するサイバースペース(仮想空間)に広告の価値が出る。SNSはそこで莫大な利益を上げるわけだ。

 SNSへの投稿のほとんどが人の欲求に関連する。大きく分けると、自慢と批判という2種類に分けられる――。

 まず、批判。欲求不満を惹起する阻害要因(例:誰々が悪い)に対する批判、または、「知ってるよ」という哲人的欲求の発露・表出、あるいは二者の混合(例:陰謀論)など、いくつかのパターンがある。

 次に、自慢。欲求が満たされることを人に誇示するのは、自慢であり、これはわかりやすい。

 美味しい食べ物を食べているとか、空港ラウンジで寛いでいるとか、ビジネスやファーストクラスに乗っているとか、高価な商品を購入したとか、高級車に乗っているとか、豪邸で裕福な生活をしているとか、ここまでは商人的欲求だ。

 名門校に合格した(子女を含めて)とか、当選したとか、昇進・昇格・独立起業したとか、ビジネスで成功したとか、著名人や有力者と一緒にいる(付き合っている)とか、これらは軍人的欲求になる。

 メディアの取材を受けたとか、講義や講演を行ったとか、論文を発表したとか、誰も知らない情報を披露するとか、あるいはこの記事のようなちょっとした知的成果物の投稿は、哲人的欲求の部類に入る。

 最後に、どれにも該当しない投稿がある。失敗談だとか、怪我や病気だとか、なかに高熱を示す体温計の写真、血だらけや腫れ上がった患部の写真をアップする人もいる。これは注目を集めたい(承認欲求の一種)トリガー現象で、心理学的には、人は正しいことをして注目されないと、「負の注目」を集めようとする、と説かれている。

 このように、SNSは人の欲求を利用して巨額の儲けを上げてきた。われわれ一般人はひとえに自らの欲求故に、来る日も来る日も無償でSNSの奴隷になるわけだ。

 ただ諦めてはいけない。SNSに一方的に利用されるのではなく、逆に自分にとっての価値を絞り出すこともできる。私の場合、仕事柄、レポート作成や研修教育の材料をSNSから仕入れることもある。たとえば人間の心理や欲求を研究するにあたって、SNSは材料の宝庫だ。

 目的意識を持つことが大切だ。貴重な人生、時間資源を単に無思慮・無思考的にSNS企業の株主利益に貢献するのはあまりにも、馬鹿馬鹿しい。

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