反独裁も自由・正義もビジネス、国際政治には善悪なし

● 死に方が選べない悲劇

 中国の仲介でイランとサウジアラビアが国交回復。これは歴史的な出来事。アフリカに続き、中東アラブはすでに中国の掌握下に入った。さらに習近平の訪露(2023年3月20日~22日)があって、これからの展開をみたい。中国が何らかの形でロシアとウクライナの停戦調停に成功すれば、米国の一極支配時代の終焉をも示唆する。世の流れは、中国側にある。

 面白いことに、米国が中国のウクライナ停戦協定提案に反対している。当事国のウクライナが反対していないのに、アメリカが反対するとは何事だ。米国は停戦反対なら、戦争続行だ。つまり、ウクライナ戦争は米国の意思で続いている。ウクライナ人は、米国のために死んでいる。

 こういうタイミングに岸田首相がウクライナを訪問するのは、戦争続行支持への意思表明としか受け取れない。日本の和平憲法はもはや重要ではない。重要なのは憲法制定者米国の意志だ。米国の意志であれば、日本人もウクライナ人同様に戦争をし、死ななければならない。

 死ぬのは良いが、誰のための死ぬかだ。太平洋戦争では日本人は祖国のために死んだ。今は死に方の選択すらできなくなった。米国の傀儡であり、死に方は米国が決めるのである。

● ホンジュラスの台湾断交と中国国交樹立

 国際政治には善悪がない。あるのは、損得、国家利益のみ。ホンジュラスの台湾断交と中国国交樹立決断(意思表明)はそういう意味で正しい。そもそも日米はイデオロギーやら正義やら言うなら中国と断交し、台湾と国交樹立をするべきだろう。なぜそうしないのか。経済的利益にすぎない。ならば、偉そうに正義など語っていられないはずだ。

 米国発の「中国脅威論」と「中国衰退論」、そもそも矛盾ではないか。いや、ちっとも矛盾ではない。「脅威」は客観的事実、「衰退」は主観的願望。強いから、弱くなってほしいと。

 ホンジュラスと台湾の断交、台湾が悪い。国交のないリトアニアに12億ドルもの援助を与えながら、国交のあるホンジュラスには「釣った魚に餌をやらない」。それでは中国が乗り込むまでもなく、ホンジュラスが離れていくだろう。台湾の自業自得だ。蔡英文政権の愚よりも、彼女を選んだ台湾有権者の問題だ。

 ただいつもと違って、今回のホンジュラスの台湾断交・中国国交樹立は、「予告」式で行われている。台湾には、先行して断交を宣告し、ホンジュラスに通知する余裕を与えた。しかし、蔡英文にはそれができない。死刑囚に執行を待つ期間の恐怖を与える、という意図があったかも知れない。死刑囚と違うのは、その間に自殺する自由も与えられていることだ。

● 日台関係の脆弱さ

 いわゆる日台友好は3つの源泉を有している。

 源泉その1、歴史的な繋がり。
 源泉その2、ともに中国にいじめられた上での傷の舐め合い。
 源泉その3、ビジネス(上記の顧客層からの収益)。

 垂秀夫駐中国大使は2023年3月17日、大分市で講演し、台湾有事の可能性は低いとの認識を示した。垂氏は「本質的なことで見た限り(中国に)政策の変更はない。予見できる将来、中国が武力で台湾を統一することは想定していない」と述べた。垂氏は中国や台湾での勤務経験が豊富で、外務省きっての中国通として知られる。

 大使はアホではなく、アホ向けのアホ言論だ。有事になったら、責任をとってくれるのか?取らない、取れないに決まっている。責任を取りたくない大衆向けには、希望的観測に合わせたアホ言論が最適だったからだ。有事になれば、「想定外」で片付ければいいだけのことだ。

● 資本主義の蓄財原理

 19世紀から始まる西欧型資本主義の原初的蓄財は、暴力による版図拡張だった。日本もそれを真似てアジアのほとんどを手中に収めた。最終的にアングロサクソンに負けた日本人は心情的に、それでもアジアの主であり、中国人という同じ黄色人種による超越を許さなかった。

 ゆえに、米中の戦いでは、日本人にとって中国の勝ちはあり得ないし、あってはならない。しかし中国が勝った時の日本の立場は、どうなるのか?台湾人はいやいや、俺たちは同じ中華民族だから、まあ仲良くしようやですむが、日本人は?考えたことはあるのか?

 3月15日、反中反共ビジネス(産業)のビッグボスである郭文貴がニューヨークで逮捕された。10億ドルに及ぶ11件の詐欺容疑だと。反中反共の右派保守層をターゲットに、資金を集め、豪邸やヨットの購入に充て、私財を積み上げた。繰り返してきたように、反中反共という看板、ポリコレを掲げてこういった犯罪から合法的ビジネスまで、共通する部分は「お金のため」

 原理主義ベースの、単純なイデオロギー次元のものは稀有だ。

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