対中関係と「戦略的自律性」、日本はなぜフランスに学ぶべきか

 マクロン仏大統領の訪中、日本メディアはほとんど真相や本質を報じていない。以下、マクロン氏が提示した政策ポイントを総括する――。

 1. フランスは、純粋な米国追随から脱却し、国益優先の自主外交に転じる。
 2. フランスは、自国に無関係な台湾問題に関わらない(台湾問題は、実質的に米中問題であるから)。
 3. フランスは、経済的な脱中国(デカップリング)が不可能であり、それに参加しない。
 4. フランスは、軍事の脱米化、経済の脱ドル化に取り組む。
 5. 欧州もフランス同様、脱米国依存に取り組むべきだ。米中欧の三極世界を目指す上、フランスは第三極である欧州のリーダーになる。

 フランスが打ち出した「戦略的自律性」は、欧州の中でも激論になっている。マクロン大統領はあえて結論づける形にしてみせた。

 欧州の「戦略的自律」とは、欧州連合(EU)が自己決定権を持ち、自分たちの戦略的利益を守り、発展するために必要な政策や行動をとる能力を指す。これは、EUが他国や国際機関に依存することなく、自らの利益や価値を尊重し、影響力を行使できるようにすることを目的としている。近年、米中対立が激化する中、EUは欧州の戦略的自律を高めることに注力している

 欧州の「戦略的自律」は、EUが単一市場や通貨ユーロ、共通の貿易政策、外交政策など、共通の政策を共有していることによって、実現される。ただし、欧州内にその戦略の構築に合意がなければ、ある種の内部分断が起こり得る。言い換えれば、各国独自の「戦略的自律」になる。それは、中国が狙っているところで、つまり中国の「欧米分断」「欧欧分断」戦略はすでに奏功し始めたということだ。

 マクロン大統領の言説には、親米派欧州と米国は早くも批判、非難に躍起した。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の社説はヒステリックだ。「欧州が答えるべき問いは、台湾をめぐる(危機的)状況を加速させることがわれわれの利益になるかであり、その答えはノーだ」との一句。それにまさに、マクロン氏が答えようとしている――。

 米国こそが欧州の利益を考えたことがあったのか?ウクライナ戦争で、欧州からあるゆる利益を巻き上げ、欧州を搾取してきた米国には今更、利益云々を語る資格はあるのか。中国が買ってくれた160機のエアバスは何よりも明快な答えた。

 米上院のルビオ議員がマクロン氏に、「あなたは欧州を代表することができるのか」と問いかけたが、同じ質問で突き返したい。「アメリカは正義を代表することができるのか」と。フランスは中国好きなわけではない。忖度するつもりもなかろう。単にフランス自国の利益を考慮した意思決定にすぎない。米国はそもそも欧州諸国の仲間を搾取し、利益を独り占めしてきたから、こうなったのだ。

 米国には何ら反省もなく、マクロン大統領を非難するとは、恥知らずとしか言いようがない。米国は欧州の仲間を搾取し一人儲けし過ぎたから、離反を招いたわけだ。今後は、ドイツなど他の欧州主要国の出方次第で米国の孤立が深まるかもしれない。

 ASEAN、アフリカ、中東、南米に続いて、欧州にも中国は切り込み始めた。最後に、中国は日本との関係改造に乗り込んでくるだろう。実利主義的に、日本は、米国が中国に負け、西太平洋から引き揚げてから、中国に臣服するよりも、いますぐにでも強かに米中に二股をかけて条件交渉に着手したほうがはるかに国益になる。

 日本人はあれだけ反米だったが、太平洋戦争に敗戦すると米国一辺倒に傾く。ある意味で「無節操的な柔軟性」をもつ民族だ。ならば、ある日に一変して中国に跪き、今度中国の属国に成り下がってもおかしくない。台湾人は、そもそも中国と同根だから、中国に陥落すれば、一夜にして中国人に変身する。日本人にはそれができないのだ。

 今の日本人は、万歳して崖から飛び降りるような気概のかけらもない。太平洋戦争では、日本人は祖国日本のために戦って米国の奴隷になった。今そしてこれからは?米国のために戦って中国の奴隷になるのか?よく考えてほしい。

 フランスのように、「戦略的自律性」をもって、日本の国益とは何か、真剣に議論するときがやってきた。しかし残念ながら、日本人は、議論をしない。「空気」にのみ従う民族だ。

 補足になるが、中国は現状、日本領土の侵略・占領よりも、経済封鎖だけで十分それ以上の効果が得られるため、軍事行動の必要性が薄い。ただ、台湾有事に際して、日本の米軍基地が戦闘支援に使われたり、自衛隊が参戦した場合、中国には物理的に日本領土を攻撃し、占領する口実を与えてしまう。

 中国からすれば、日本も認めているように台湾は中国領土の一部であるから、日本の参戦はつまり「中国侵略」にあたる。しかも、2度目。解釈にもよるが、一般の軍事行動、通常戦争はもとより、対日本本土の核使用が「大義名分」を得る場面もある。故に、日本の領土保全と国民の安全という国益を前提にすれば、絶対に台湾戦争に加わらないことだ。フランスが宣言したように、「戦略的自律性」が必要だ。

 最後に、立花とChatGPTの対話を参考に掲載する。AIの回答は、日本全国紙の社説より劣っていると思えない。

【立花質問】 

 マクロン仏大統領の訪中、欧米にとってのインパクトはどんなものか?欧州の「戦略的自律」で、欧米分断につながるか?

【ChatGPT回答】

 マクロン仏大統領の訪中は、欧米にとって複数のインパクトを持つことが予想されます。

 まず第一に、フランスが中国との関係を強化することによって、中国が世界の中心になっている現実を認めることにつながる可能性があります。これにより、欧米諸国と中国との関係においてより現実的なアプローチが求められるようになるかもしれません。

 一方で、マクロン仏大統領が中国との関係を強化することが欧州の「戦略的自律」にどのような影響を与えるかは、論争の的となっています。欧州は、米国に対する依存を脱し、独自の外交・安全保障政策を進めることを目指していますが、中国との関係強化によって、欧米分断が進む可能性もあります。

 欧米分断が進んだ場合、欧州が単独で中国と関係を強化することで、米国との関係に悪影響を与える可能性があります。一方で、欧米が結束して中国との関係に対応することができれば、より効果的なアプローチが求められることになるでしょう。

 総じて言えることは、マクロン仏大統領の訪中が欧米に与える影響は、今後の展開次第であるということです。欧米各国は、自国の利益を守りながら、より現実的なアプローチを取る必要があります。

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