私の「悪口予測」が的中するのにそう時間を要さなかった。
僅か1年後の出来事だった。クールジャパン機構がマレーシア・クアラルンプールにある伊勢丹「Japan Store」日本専門デパートから撤退することになった。NHKニュース報道では、「運営は大幅な赤字となっていた」ことが撤退の原因に挙げられた。
「日本文化の発信」という理念の捉え方が間違っているのが根本的な敗因である。これは何も「Japan Store」案件に限られた話ではない。一般論としても通用する。
要するに受信側のニーズや感覚といった要素が無視されていたことだ。「ジャパンはクールだ」という上から目線に終始している。まったくのナンセンスだ。マレーシアに限らず、アジア諸国の消費者の真の需要とは何か、いわゆる客体を知らないまま主体が一方的動作によって独り歩きしてきた。
マーケットを前に発信云々よりも、まず受信側にポイントを置くという基本常識すら忘れられている。いや、最初から持っていなかったかもしれない。さらに妙なことに同種の失敗をいくら繰り返しても、一向に姿勢を変えようとせず、いつまでも「発信」し続け、金をドブに捨て続けるのである。学習機能の無さを通り越して、もう愚の世界である。
クールジャパンほどクールでないものはない。クールは他者からの賛辞であって自賛するものではない。まして謙虚を美徳とする日本人にしてみれば一種の病的な歪みである。正直、恥ずかしい。
進出よりも撤退を大々的に報じてほしい。なぜ失敗したのか、敗因の分析もしっかり行ってほしい。さらに税金を使ってる以上、出資や資本関係、高額な設計費や内装費をも含めた調達関係、仕入関係、運営上の利権などすべて透明化する義務はないだろうか。
「Japan Store」から撤退するクールジャパン機構は株式を手放す。それを伊勢丹側が買い取り、店の営業を続ける。いやいや、これもまた前途多難といえよう。いったん作り上げたコンセプトを変えるのも簡単ではないだろうし、ここ数年海外店の閉店が続く伊勢丹自身の課題も山積だ。