マレーシア移住(46)~クールジャパン連戦連敗、自画自賛と自己陶酔のツケ

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 クールジャパンはもはや、「コールドジャパン」と化している。

 官民ファンド「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」と組んで米国で「日本茶カフェ」事業を展開する長崎県の企業グループが、機構が一方的に運営会社を清算しようとして損害が出ているとして、約4千万円の損害賠償と出資契約の無効確認を機構に求める訴訟を東京地裁に起こした。

 訴状によると、機構は昨年以降、事業赤字などを理由に運営会社の解散を迫り、今年4月には米国の裁判所に清算を申し立てた。長崎側は、機構から不相応に大きな組織や新ブランドの商標登録を要求されて費用負担が膨らんだにもかかわらず、今度は運営会社を無理やり清算させられようとしているとして、出資時の契約に違反すると主張する(2018年9月21日付朝日新聞)。

 クールジャパンはクアラルンプールにある伊勢丹「Japan Store」日本専門デパートから撤退した、その直後だった。相次ぐ撤退の中身はほぼ同じ――事業の不振。

 朝日新聞の同報道によれば、長崎側は単独での事業継続を望んでいるという。原告代表者は取材に「不毛な時間と費用、労力を費やして事業は瀕死の状態。早く機構のしばりから解放してほしい」とコメントした。

 伊勢丹「Japan Store」案件と比較して、クールジャパンの撤退に至る経緯には類似点が見られる。以下、2018年7月10日付「東洋経済オンライン」記事「三越伊勢丹『クールジャパン』のあきれた実態 官民ファンドが出資する海外店での迷走」の抜粋引用――。

 「(クールジャパン)CJ機構側は昨年(2017年)9月ごろから再建案の策定を三越伊勢丹HDに何度も打診した。だが『会議を開こう』とメールを送信してもまともに返事が来ない。話し合いに応じる姿勢が一向に見られなかった。今年1月にようやく再建に向けた会議が開かれた。ところが、翌2月に突然、三越伊勢丹HDが『(共同での)事業をやめたい』と切り出した。さらにCJ機構が保有する株式の買い取りについて、「無償での譲渡を要求した」(関係筋)という。再び行き詰まったが、経緯を知った大物議員が介入したことで、『出資額(9.7億円)の半値で買い取る』との条件で落ち着いたようだ(取得額は未公表)」

 儲かっていたら、互いに悪口を言わないだろうが、残念ながら事業がうまくいかなかった。クールジャパンへの批判はあってしかるべきだが、企業側にもまったく責任はないものだろうか。

 私のフェイスブックには、事情を知る友人から以下のような書き込みがあった――。

 「クールジャパンがスタート当時に色々な事業の立ち上げの話を直接聞いた。立ち上げ時に補助金を利用するのが分かったが、立ち上がり後も補助金ありきで事業計画が立てられた案件が多かったようだ。さらに、補助金コンサルタントの存在も無視できない。どう計画を立てる、計画書をどう書くと補助金が出やすいかをコンサルタントしてくれる。事業が継続する事や発展する事などは入っていなかった」

 事実の真偽を完全に確認したわけではないが、日本国内の補助金申請にコンサルタントたる専門家が存在していることは事実だ。であれば、クールジャパン案件において同様の状況があると類推できなくもない。補助金目当ての事業、行政の助けがあれば安心して事業展開ができるという甘い読みで、真の消費者、真の市場を見失ってしまう。そうした側面は企業側になかったのだろうか。

 日本製品はクールだ。日本文化はクールだ。世界に発信せよ。そもそも、上からの目線に立脚すれば、海外市場を真摯に分析し、海外消費者の目線を精緻に再現することはできまい。クールジャパン類の自画自賛と自己陶酔には、そろそろ終止符を打ったらどうだろう。

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