マレーシア移住(47)~連戦連敗、学習機能なき日本企業の「神風式」海外事業

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 物語は続く。私の2019年5月14日付けの記事を転載する――。

 クアラルンプールの中心部で開発が進む国際金融区「トゥン・ラザク・エクスチェンジ(TRX)」内の複合施設に、「西武」が出店する。情報は新しくないが、工事が進むにつれ、いよいよ案件も動き出すと思われる頃に、雑感を記しておこう。

 本件について現時点の状況をみると、私個人的な「独断と偏見」では、西武に勝算がないと見ている(資本関係次元の話ではない)。

 高所得層向けとは言っているが、伊勢丹ロット10の「Japan Store」惨敗の教訓をどこまて生かせるか、何も抜本的な改善の様子が見られない。海外富裕層向けの成功モデルとは、一体何なのか。議論もされないまま、失敗を繰り返しているだけではないか。

 友人を含めてアジアの富裕層リサーチで分かったことだが、日本びいきの人が多いのは紛れもない事実だ。ただ彼たちいわく「日本を楽しむなら、実際に日本へ行けばいい」

 「日本文化を発信する」。正直、それは自惚れよりも、勘違いである。「発信」よりもまず「受信」側をきちんと見ていないからだ。外国人というのは、どんな日本を見たがっているかを知ろうとしない。それは必ずしもリアルな日本でなく、時には日本人からみれば、「フェイク・ジャパン」でさえあり得る。

 海外では、「リアル・ジャパン」よりも、「フェイク・ジャパン」が売れている事例は数多くある。こればかりは、本物の日本人の感性に頼ってはならないことだ。逆説だけれど。

 日本文化の輸出は、布教でも伝道でもない。商業ベースの話なら、商業的に考えれば良い。前出の伊勢丹ロット10「ジャパンストア」はまさに、立派すぎて「博物館」になっていた。博物館でさえ、入場料を取るくらいなのだから……。

 日本文化云々、大義名分だけ担いで、結局のところ、惨敗するのは見るに堪えない。官民を問わず、そうしたプロジェクトで甘い汁を吸っているのは、案件立ち上げ業者と関係者たちだけである。予算消化の対象にすぎない。

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