運命のドアを叩こう、閉塞感打開にはまず自分から

 バリ島滞在中に感じたのは、日本人客が激減したことだ。リゾートホテルの客は、8割以上欧米系(ロシア人が多い)、残りのアジア系は台湾と一部中国大陸の人たち、日本人はほんの数組しかいなかった。90年代は、東南アジアのリゾートに行けば日本人客が大半だったが・・・

 お金を使いたがらないというか、ムードが暗い。「先が見えない」「不安」というのが、キャッチフレーズ。これを逆に読むと、「先が見えると、安心」。先がなぜ見えるのか、国や企業が安定しているから、ある程度の将来が保障されるのだ。つまるところ、自分や家族の運命は他者に委ねているようなものだ。それでいいのか。

 運命は変えられるものか、各人の認識がそれぞれ異なるかもしれない。しかし、問題は運命が変えられるかどうかではなく、変えようとするかどうかにある。「この時代が悪い」「国が悪い」「政治家が悪い」「会社が悪い」・・・他者の責任にしてしまえば、いつまでも何も変わらない。

 ベートーヴェンの交響曲5番は誰もが知っている、あの「ダダダダーン」出だしの「運命」。この「ダダダダーン」の出だしは何を意味しているのか。ベートーヴェンが「それは運命がドアを叩く音だ」と答えたと言われている。時のベートーヴェンはすでに難聴を自覚し始め、「運命」にとらわれ始めた時期でもあった。「運命がドアを叩く音」を曲に組み入れ、つねにこの主題を意識しながら、曲を展開し運命に抗う固い意志力を後世に伝えている。

 「運命がドアを叩く」よりも、勇気を出して、「運命のドアを叩こう」ではないか。自分の運命のドアを叩いた時点で、真の自由を手に入れ、真の幸福感が生まれるのである。