年明けの対外業務が始まった。
年末年始は、太湖湖畔で過ごした。4日間の成果を報告すると、マイケル・サンデル氏の「これからの『正義』の話をしよう――いまを生き延びるための哲学」(350ページ)を完読し(一部、完全消化していないところを後日再読とする)、それと、2万3000文字のレポートをまとめた。今日、そのレポートを顧客へ配信した――「2012年の中国労働市場と企業のあり方」。
例によって、毎年恒例の年頭挨拶は、ある種の予測検証の形に定着していた。昨年の年頭予測がどのくらい的中したかを検証し、さて今年はどんな一年になるかと次の予測を立てるのが慣例だった。
今年はただの予測よりも、中国と中国労働市場のメカニズムに触れ、掘り下げることにした。中国労働市場の現状はどうなっているのか、なぜこうなっているのか、先はどうなるのか、企業にとってのリスクは何か、そして、企業は何をすべきか・・・、日々のセミナーやコンサル現場で話をしていることを系統的にまとめたうえで、最新の情報と整理された観点も加え、長めのレポートを作成した。
性質上、ブログ転載はできないが、概要をいうと、次のとおりだ。
今の中国の労働市場では、市場経済的自由な取引よりも、計画経済化が進み、政府・行政がどんどん介入を強化している。事実上の終身雇用、解雇と企業人事権の制限、賃上げの圧力・・・雇用制度から賃金制度まで、官が口出ししている。
外部市場が計画経済化によって流動性を失った以上、企業内で「疑似市場経済」のメカニズムを作りあげなければならない。従業員の良性的競争をもって、善が報われる仕組みを作り上げることだ――「企業内市場化経営モデル」(立花モデル)。
レポートの各節の題だけを掲載する。
===【新春特別レポート】「2012年の中国労働市場と企業のあり方」===
● 中国は市場経済国なのか?
● 市場経済国承認は取引だ、功利主義原理は不動なる基準
● 労働者の怒りの矛先は資本家へ、計画経済の懐メロを口ずさむ
● 白猫も黒猫も、市場経済のゆがみは計画経済で補正する
● 労働組合の結成は強制か?
● 誰が労働者の面倒を見るのか?「安居楽業」の神話
● 解雇不能のメカニズム、新・計画経済時代突入の労働現場
● 刑法廃止の「平和国家」と減給不能の「平和会社」
● ルールなきストライキは企業内テロ行為化する
● 賃上げは法制度の担保と当局のお墨付きと支援を得る
● 「労働者の賃金は低すぎ、企業は儲け過ぎ」
● 古い鳥を追い出して、新しい鳥は生まれるか
● 「少なくても13か月分の賞与を払え」
● 労働組合全盛期へ、集団交渉全盛期へ
● 先に豊かになった人は他の人も豊かになれるように助けようとしない
● 労働市場は政府介入の拡大で計画経済化する
● 「入口―経路―出口」の完全封じ込め措置と賃金の聖域化
● 内外の硬直化による企業新陳代謝機能障害
● 「企業内市場化経営モデル」
● (1) 内市場の基本構造を創る
● (2) 内市場企業の性質
● (3) 内市場企業の納税と「政府」の役割
● (4) 内市場企業の利益配分メカニズムの効用
● (5) 内市場企業の「解雇」と「社内失業」メカニズムの効用
● (6) 内市場経済体制の構築