マレーシア旅行ドタキャン(後編)~贈り物という善意の押し付け

<前回>

 マレーシア旅行のドタキャンで多くの当事者に迷惑がかかった。A夫は、口先では「何も謝ることはない」と怒鳴りつけても、さすがにそれではまずいと思ったのか、突然A妻を通して、私の妻への洋服の贈り物をEMSでマレーシアに送ってきた。それがまた大騒ぎになった。

 マレーシアの税関から「関税申告」の連絡がやってきた。配送品の中身について、アイテムの明細(品名やブランド)と何よりも購入金額を明示する明細領収書を提出するよう求めてきた。ギフトですから領収書のようなものはないと言っても、通用しない。一方では、ギフトをいただいて贈り先に値段を聞くのは甚だ失礼と思って、妻は懸命に税関と交渉を続けた。だが、それが失敗に終わった。

 仕方なく、A妻に領収書の提出を求める連絡をした。しかし、A妻がA夫に聞いたら、領収書たるものはないという回答。それでは困った。中身はいくらの品かと聞いたら、何と4万円近くだった。驚いた。

 以前にも書いたが、マレーシアで生活する立花家の衣服費は、年間数千円程度。市場から1枚10リンギット(約300円)もしないような安いTシャツを買って、喜んで着ているのだ。4万円近くの予算では、100枚以上ものTシャツが買える。われわれの10年分もの衣服代にあたる。こんな高級服を着たら、醤油でも垂らしたら罪悪感を抱く。正直、怖くて着れない。貧乏人根性と言われても仕方ない。

 しかも、われわれが住む赤道直下、常夏の南国ではまったく出番のないジャケットまで入っているとは、びっくり。お金の無駄遣いではないか。関税でもめていることを知ったA夫からは、「関税がかかったら、請求して、その分払ってあげるから」との連絡。さらに「要らないなら、マレーシアで適当に誰かに上げるか、捨ててくれ」と。

 誰かに上げるにしても、他人のサイズも好みも知らずに、しかももらったギフトの転送では失礼ではないかとわれわれは思う。さらに捨てるとなると、10年分の衣服予算、新品の高級服をそのまま破棄処分にすることは、われわれにはできない。良心的にも価値観的にもできない。

 領収書のない配送品は、税関が勝手に価格を見積もって関税を確定する。円換算で5000円以上の請求が税関からやってきた。もちろん払うしかない。それで15着以上ものTシャツが買えると思うと、またまた心が痛む。いつまでも安Tシャツ次元の話でごめんなさい。吝嗇家の我が家、それでも価値観は価値観であるから、仕方がない。

 私は短絡的にA夫のことを批判したくない。A夫には自分自身の「内在的論理」があって、私には理解できていない。それだけのことだ。だから、話し合おうと。親戚である以上、今後は互いにしこりを残さず気持ちよく付き合っていきたい。そのため、一連の出来事の原因を突き止め、胸襟を開いて率直に互いの思いを打ち明け、話し合ったほうがいいのではないかと思って、ZOOM会議を提案した。

 ところが、「話すことはない」と、A夫が対話をあっさりと拒否。

 コミュニケーションまで拒否されると、為す術がない。われわれとしては、ギフトを日本へ返送するしかない。残念ながら、A夫の一個人とはもう付き合えないかなと思った。その後、A妻から何度も謝罪してきて、逆に中間に立つ彼女を難しい立場に陥れて大変申し訳なく思った。

 心理学の事例学習として、まずChatGPTに聞いてみたら、これもまた驚く。何と、NPDという精神科系の障害ではないかということが判明した(専門家の診断が必要)。


● 自己愛性パーソナリティ障害(NPD)

 このような行動パターンは、自己中心的な人格特性や強い自己愛的傾向を示すものであると考えられる。心理学的には、以下の要素が関与している可能性が高い。

 まず、自己愛性パーソナリティ障害(Narcissistic Personality Disorder, NPD)の特徴が顕著に現れている。NPDを持つ人々は、自分自身を過大評価し、他者からの批判や異論に極めて敏感であり、これを自己の尊厳に対する攻撃とみなすことが多い。そのため、異なる意見や反対意見を受け入れることができず、意見交換を拒否する傾向がある。

 また、感情的な反応は、未熟な感情制御の表れであり、自己愛の傷つきやすさを補うための防衛機制と解釈できる。自分の考えを絶対視し、他者からの批判を耐えられないため、攻撃的な態度を取ることが多い。

 さらに、他人に迷惑をかけても謝罪をしないという行動は、自分が常に正しいと信じる思考からくるものであり、他者の視点や感情に対する共感が欠如していることを示す。このような態度は、社会心理学的には「認知的不協和理論」で説明できる。自分の行動や信念に矛盾が生じた場合、その不協和を減少させるために、自分を正当化するか、相手を非難する傾向がある。

 自己愛性パーソナリティ障害(Narcissistic Personality Disorder, NPD)は、持続的で過度な自己愛、誇大な自己重要感、他者への共感の欠如、そして注目や賞賛を強く求めることが特徴の精神的障害である。この障害は、パーソナリティ障害の1つであり、通常、青年期または初期成人期に明らかになる。

● 特徴的な症状

 NPDには以下のような特徴的な症状が見られる。

1. 誇大な自己重要感
 自分が特別で優れていると感じる。他人よりも重要であると信じ、自分は特別な扱いを受けるべきだと思っている。

2. 過度な賞賛の要求
 自分に対する賞賛や承認を常に求め、それが得られないと極端に落胆する。他人からの賞賛を過度に求め、批判に対して非常に敏感である。

3. 共感の欠如
 他人の感情やニーズに共感する能力が欠如している。自分の関心事や欲望を優先し、他人の気持ちや意見を軽視する傾向がある。

4. 人間関係の利用
 自分の目的を達成するために他人を利用する。他人の権利や感情を無視し、自分の利益のために他人を操ることがある。

5. 優越感と誇大妄想
 他者よりも優れていると感じる一方で、他者の成功や幸福に嫉妬を抱くことがある。他人の成功を認めず、自分が常に上位であると信じている。

6. 特別扱いの要求
 自分が特別であり、他者には適用されないルールや期待が自分には適用されるべきだと感じる。特別な待遇や特権を求めることが多い。

7. 感情の不安定性と過敏性
 ちょっとした批判や失敗に対して過剰に反応し、激しい怒りや落胆を示すことがある。これが社会的な摩擦や人間関係のトラブルを引き起こすことが多い。

● 原因

 NPDの原因は完全には解明されていないが、遺伝的要因、環境的要因、そして発達的要因が組み合わさって生じると考えられている。幼少期の家庭環境、親の過度な甘やかしや厳しい批判、過保護または無関心な育て方などがリスク要因となることがある。

● 診断

 NPDの診断は、専門の精神科医や心理士が行う。診断は、持続的なパターンで現れる特徴的な行動や態度の評価を基に行われ、他のパーソナリティ障害や精神的疾患と区別される必要がある。

● 治療

 NPDの治療は困難であるが、心理療法が主な治療法である。個人療法やグループ療法を通じて、自己理解や共感能力の向上、他人との健全な関係の築き方を学ぶことが目標となる。また、必要に応じて薬物療法が補助的に用いられることもある。

 NPDを持つ人は、自分の問題を認識しづらく、治療を拒むことが多いため、治療の成功には時間と努力が必要である。しかし、適切なサポートと治療を受けることで、自己中心的な行動や思考パターンを改善し、より健全な対人関係を築くことが可能である。

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