老害は公害!後継者よりものれん分け

 「立花さんのところ、会社の後継者はどうなっているのですか」

 このような質問ははじめてではない。私のところには、後継者がいない。後継者の育成も指名も全く考えていない。会社は永続的なものではない。顧客に永続的な価値を提供することに意義がある。それができなければ、会社を潰す。

 コンサル会社で、よほど企業化した大手でない限り、創業者やカリスマ的な人物で成り立っているところが多い。そこで、大抵後継者などが育たない。カリスマ的な存在の影に、堂々と意見を主張し、さらにそのカリスマを否定するような人物はなかなか生まれない。無理して指名しても、ただただその後継者にプレッシャーをかけるだけである。

 カリスマ的な存在を否定し、さらなる脱皮をなくして進化はありえない。進化が止まる会社を存続させる意味はない。むしろ潰した方がよい。

 私は、のれん分けを望んでいる。いや、のれんが負担になるのなら、顧客基盤だけ引き受けて別ブランドを打ち出してもいい。顧客に価値を出し続けてくれれば何だっていい。

 顧客に価値を出してくれる人がいれば、無償で会社を引き渡す。会社から抜けた私にもう少し利用価値があるのなら、使ってもらえばいい。私はオーナーではなく、雇われ者、報酬をもらって、働けばいいと。そう思っている。

 「立花さん、あと20年は働けるんじゃないですか」

 ボケますよ。人間は。老害ほど悪いものがない。私は基本的に50代引退を宣言している。あとせいぜい10年。体が自由なうちに妻と世界旅行をして、余生をエンジョイする。いま、ミャンマー事業を立ち上げているが、これが人生最後の挑戦だと位置付けている。

 脱サラして起業した人の半分が一年以内に消え、10年後に残っているのはわずか10%未満という統計が出されているが、それが本当だとすれば、私は本当に幸運児だと思う。これであと一回失敗しても平均確率以上で、満足だ。

 晩節を全うするには、花道引退が一番だ。無節操や臆病と言われたらそこまでだが、それが価値観だ。

 社員にもそう言っている。私より若い人の終身雇用など、私にはできるはずがない。力をつけて、どこに行ってもサバイバルのできる人、価値を出せる人になってくれと。一日も早く巣立ってほしい。

 人生は旅だ。旅立ちが美しい。