成功事例と失敗事例、コンサルタントの歓喜と悲哀

 2011年末に当社提案の人事制度導入が終了したA社のK総経理からメールが来た。

 「昨年度は、新人事制度施行後、会社が活性化し、人事面でも自浄作用が働いたと感じます。実際、社員の入れ替わりが実現出来ました。お陰様で創業以来、初めて黒字化達成し、今年2013年1月の賞与は、過去最高額を支給しました。今後の方向性も見えました・・・」

 成功事例がもう一つ増えたことで、何よりも嬉しい。最近各社現場の悪戦苦闘、自分が極度の疲労に襲われる中で、大きな励ましである。このA社には、まだまだ懸案や問題が残っており、7合目かせいぜい8合目のところだが、とりあえず山場は乗り越えたと思う。

 在中日系企業の経営・人事制度改革、導入対象となる当社提案制度の根本的理念はどこの会社も共通している。だが、これまでの実績では、1割ほどの失敗事例が出ている(といっても、どれも制度実施までたどり着かずの空中分解だった)。明暗の分かれ目はほとんど、日本人トップ・経営陣の姿勢、いわゆるリーダーのあり方にあると言ってよいだろう。

 成功事例のどれを見ても強力なリーダーシップがあった。冒頭のA社のK総経理も例外ではなく、大変強靭な意志力の持ち主である。一旦決断したことは、やり遂げるまで緩めない、強いトップダウンに徹した姿勢は極めて印象的だった。

 逆に失敗事例の典型は、優柔不断で、いかにも調整型のサラリーマン総経理がほとんど。意見を集めて要素抽出して経営決断の材料にするのではなく、ただただ、各当事者の利害関係調整に余念がなく、人数分の意見を足して人数頭で割るようなことしか考えない。だったら、何のための総経理かと怒鳴りたくなる。

 決断できないトップはトップといえるのだろうか。サラリーマンとして失敗したくない。不作為や決断放棄、あるいは本社への盲従、気持ちは分からないわけではないが、心情的に理解しても、立場的に是認するわけにはいかない。

 私はコンサルタントとして、決して自分の意見や提案に固執するつもりはまったくない。議論して間違ったことが判明すれば、速やかに是正する。顧客企業に対しても同様だ。たとえ日本本社社長の指示であっても、間違ったら撤回してもらう。それができないと、私にコンサルを依頼しないほうがいい。コンサル料は、無駄だ。コンサルタントの仕事は、論理的な議論で正しいことを正しいままに実施することだ。

 このブログ記事を見て引っ込んでしまう経営者がいるかもしれない、商売上のマイナスになる。その通りだ。私はそのほうがよい。失敗事例を作るよりも、受注しないほうがよい。

 本日午後の打ち合わせで、新しく、T社の人事制度案件がキックオフした。どうか成功事例になるよう全力を傾注して取り組んでいきたい。あとは、K社は4月に新制度導入がほぼ確定で、どうか良い方向に向かうよう継続バックアップ体制に入る。

 精神的にかなり疲労がたまっているので、この辺で中国での大型案件を打ち切りたいと思っている。仕事で疲れたので、会社を辞めたいと言える立場の人が羨ましい。でも、経営者は疲れたといっても誰もが聞いてくれる、同情してくれる人はいない。経営者の最大なメリットは自由、最大なデメリットは孤独・・・