骨休みしようか総経理、「新常態」時代の中国ビジネス

 「もしや、立花先生では・・・」

 先日上海出張中、某日本料理店のカウンターに座ると隣の日本人老紳士から声をかけられた。 「7~8年前だったのですが、上海○○ホテルでご講演をされたとき・・・」

 実はよくあることで、レストランやバー、オフィスビルのロビー、空港、いや飛行機の中でも隣の席にクライアントだったり、セミナーや講演会の出席者の方だったり、あるいはブログの読者だったり、何らかの形で私を知っている方に遭遇することは実に多い。

 「あなたは悪いことできないわね」。それで一番の受益者は妻だったのかもしれないといつも冗談半分で言っているのだが、酔っ払って失態したところはまだしも、見知らぬ女性と腕組んで街を歩いていたりすると、それが目撃されれば確かに大問題に発展しかねない。世は厳しく、疑わしきは被告人の利益になるとは限らないのである。

 閑話休題。さてさて、・・・思い出した。老紳士はあの有名なX社の総経理A氏ではないか。いやいや奇遇だ。かれこれ中国駐在都合二十数年という大先輩だったのである。

 「実は、中国事業を全面撤収することになりました。私も年だし、本当に疲れました。来年の撤退と帰国、待ち遠しい。早く日本に帰って骨休みしたい。・・・私事ですが、阿蘇山の近くに新しい自宅ができたんですよ」。本当にお疲れのご様子だが、後半になるとやっと明るい表情が戻った。

 中国事業はもう潮時か。人民日報が連日、「新常態」というキーワードを打ち出し、減速する中国経済が今後の「常態」となることを宣告した。さて、日本企業にとって、この「新常態」は「異常態」になるのか、あるいはすでに順応する態勢を整えたのか、それぞれの企業にそれぞれの判断であろう。

 そろそろ骨休みした方がいい経営陣は決してA氏だけではないだろう。

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