日本の良さは農村にあり、ストーリー性と外向きのイメージ作りで高付加価値

 昨日は農業回帰のことを書いたら、読者の方から大変素晴らしいコメント、課題提起をいただいた。

 まずは農業に関して私自身もこれから勉強に取り組むので、現時点において明確な回答があるわけではない。TPPなどで安い農産物が国内に流入することで小規模農家の廃業を余儀なくされるという一面は確かにあるだろう。その反面、「守り」から「攻め」への抜本的な姿勢転換、発想転換が求められる。

 緻密なマーケティングをベースとした海外市場向けの農産品の輸出。日本ブランドのプレミアムの発信力を強化するうえでは、いまのような「良い品質のものが自然に売れるだろう」という発想では絶対にダメ。産品にはストーリー性を必ず付与しなければならない。

 海外に長く住んでいると、日本はいかに「宣伝下手」かということを実感する。これだけ素晴らしいリソースがあるのに、もっともっとたくさんの生かし方があるのに、本当に残念だ。あと、農業といえば農産品。でも、それだけではない。観光農業・カントリーリゾートなど多岐にわたってポテンシャルが眠っているのだ。

 十数年前に、私が南フランスのコートダジュールにあるグラースという小さな村を訪ねたことがある。「香水の街」として有名で、コートダジュールの地中海性温暖気候に恵まれ、古くからバラやラベンダー、ジャスミンなど様々な花が咲き乱れ、天然香料の産地だった。さらに人間国宝級の調香師たちを輩出させるのも、ここグラースであった。この街は連日世界各国からの観光客で賑わい、私も見学の帰りに男性用の香水やコロンを大量に購入したほど現地の経済に貢献したのだった。

 欧米系の観光客でカントリーリゾートのファンが多い。日本の田舎は決してヨーロッパに劣っているわけではない。たくさんの資源がある。外国人が見て躍り上がるほどの魅力、日本人自身があまりにも日常的で気付いていないものがたくさんある。日本ならではのジャパニーズ・カントリー・カラーを十分に出せると思う。

 さらにいうと、たとえば、昨今の日本のウィスキーが世界でも大変高い評価をいただいている。このようなブランド力にストーリー性を付与し、地域や業界全体を巻き込めばいろんな面白い展開が期待されるのだろう。

 日本酒、これはもはや世界の「Sake」になっているわけだから、何も「獺祭」だけではない。「外向き」のイメージ作り、ストーリー作り、生かし方はたくさんあるはずだ。「Sushi」とのコンビもよし。「Sushi, Sake and Japanese Country」のような題材、間違いなく外国人の間で高い人気を得ることができよう。

 何もかも白川郷の合掌造り集落が必要なわけではない。さりげない日本の田舎が素晴らしい。たとえば、静岡あたりの茶畑、バックに富士山があれば、外国人が涙を流してシャッターを押すだろう。そこで「Japanese Tea Country Resort」でもいかが。茶道の話、禅の話、日本の固有の文化を世界に発信する絶好のチャンスではないだろうか。

 日本の良さは農村にあり。この価値を引き出すチャンスが転がっているのである。ただ明けても暮れても、海外のデパ地下で「○○県ふるさと特産品フェア」というやりかたでは、持続可能な付加価値とブランド形成につながりにくい。これだけはもう卒業しよう。

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コメント: 日本の良さは農村にあり、ストーリー性と外向きのイメージ作りで高付加価値

  1. 立花先生に触発されて、ネットで調べてみたら、農業への関わり方もいろいろあるみたいですね。

    (1)自給自足のための農業。

    (2)就農(農家から土地を借りる)。

    (3)農家として農業をやる。

    (1)と(3)では要求される事項が全く違うようだから、どちらを目指すかで心構えも変わってきそうですね。

    1. 近江さん、おっしゃる通りです。そもそも家庭農園も立派な農業で、(1)の初期段階だと思います。人それぞれの適性もあるでしょうし、試行錯誤を繰り返す中何かが見えてきます。その何かが後日の人生の流れを大きく変える可能性を孕んでいます。何でも小額の投資で可能性を試してみるのは大切で、人生の選択肢がそれで増えると思います。

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