ブルネイ(6)~核のない北朝鮮、地上の楽園ブルネイ

<前回>

 ブルネイの印象はと聞かれると、豊かな北朝鮮だと、私は答える。正確に言うと、核の代わりに石油と天然ガス、主体(チュチェ)思想の代わりにイスラム教をもった北朝鮮だ。

150502-0944-Brunei-新モスク

 石油と天然ガス部門がGDPの6割以上、輸出のなんと96%を占める(2013年データ)。医療費、教育費無料。税金なし。国民の8割が公務員。ハサナル・ボルキア国王が首相・国防相・蔵相を兼任し、国王の実弟モハメッド・ボルキア殿下が外務貿易相を務める。一族の絶対王権国家である。

 経済面において分かりやすく表現すれば、「ブルネイ・ロイヤル資源商事株式会社」という資源専門商社である。オーナー兼会長・社長の完全ワンマン企業。取締役会は形上のもの、監査役不在。社員42万人、うち終身雇用で身分を保障される年功制正社員は30万人強、残りは派遣社員。社員の医療費と子女教育費は全額会社負担、所得税支払い義務なし(会社負担)。会社理念は、イスラム教。王権神授説に基づくオーナー(国王)への絶対的崇拝と服従は全社員の義務。主業務は石油、天然ガスの採掘と輸出。

150502-1139-Brunei-旧モスク

 さらに補足すると、「ブルネイ・ロイヤル資源商事株式会社」では、完全年功制のため同年代社員間の所得格差がほとんどない。このため、嫉妬や潰しあいもないという、ゆとりある平和な会社である。

 いかがですか、日本人の皆さん、「ブルネイ・ロイヤル資源商事株式会社」に転職しませんか。・・・なんて。

 働かなくても、頑張らなくても食べていける。一生保障されている。人間の怠惰本性が是認されるのがブルネイである。全般的に勤労意欲が非常に低いと言わざるを得ない。熾烈な競争を勝ち抜き、生き延びるための意欲や闘志が失われている。いや、その必要はないし、逆にガツガツ働くのが美徳ではなく、働きたい、一旗を挙げようという有志が叩かれるのである。

 現地の方に、ブルネイで起業して大成功したサクセスストーリーはと聞くと、そんなの聞いたことないねと素気ない回答だった。おそらく少数のこのような異端児は国を出て、シンガポールあたりに行ったのではなかろうか。

<次回>