ブルネイ(11)~「涼」求める、ワニ出没しても水上生活だ!

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 ブルネイ名物の水上集落を見ずして帰れない。

150502-1104-Brunei-水上集落水上タクシーで水上集落へ向かう

 水上生活者といってもスラムをイメージしていけない。結構お金持ちも住んでいるとガイドブックがいう。実際に行ってみると大金持ちとまでいかなくとも、決して貧困生活の民ではないことが分かった。

 水上生活の基盤も一通りそろっている。警察署や学校、消防署、商店、モーターボート給油のガソリンスタンドまで揃っている。上下水管も堂々と設けられている。さらに住所もちゃんとついているので郵便物やDHLの配達も何ら問題ない。

150502-1110-Brunei-水上集落水上集落専用の下水管

 いや、まったく問題がないわけではない。ワニ!

 ブルネイ川上流に大量のワニが生息している。そのワニたちが川を下ってきて、水上集落のあたりで虎視眈々に獲物を狙っている。ガイドの話によると、小学生の女の子が学校からの帰宅途中に失踪して数日後、水辺でワニに食い散らかされた遺体の一部が見つかったという痛々しい事件もあったという。

 さらに、夜になると、水上集落あたりで懐中電灯を水中にあてるとワニの目が赤く光って見えるという。あっやー、鳥肌。寒気を感じずにいられない。

 ワニ好きではないが、水上生活者が「涼」を求めて水上生活に定着しているのが本当らしい。数百年や千年以上の歴史がある。熱い陸地よりも水上は風通しがよく、川水が日射の熱を吸収してくれるので日中でもエアコンが要らない。省エネで実にすばらしい。

150502-1107-Brunei-水上集落水上集落

 とはいっても水上建築の老朽化が進み、建物の崩壊事故もときどき発生している。中に崩れ落ちる建物が隣家に被害まで引き起こし、共倒れになる事故現場もそのまま放置されていて痛々しい光景であった。

 水上生活者には、政府は陸上への移転を呼び掛けている。ブルネイの国土は三重県にほぼ相当するが、ただ人口でみると、185万人(2010年データ)の三重県に対し、ブルネイはわずか40万ちょっと。陸上でも土地が余っているくらいで高層マンションはほとんど見ない。

 なのに、水上生活者は一向に陸上移転に応じようとしない。住み慣れた土地ならぬ川から離れたくないという。川風とエアコンの「涼」はやはり違うのだ。それだけの原因なのか・・・。

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