「立花聡の旅」カテゴリーアーカイブ

ボナペティのベトナム航空機内食、ホーチミンへ

 9月7日(木)、移動日。午後15時10分上海浦東発のベトナム航空VN523便でホーチミンへ向かう。

 ベトナム航空のこと、何回か言及したが、なぜか機内食の旨い確率が高い。本日も牛ヒレ肉のステーキは、見事なミディアムレア状態になっていてしかも、柔らかいのだ。上等なレストランと変わらない品質で思わず感動。

 しかも、サーブする客室乗務員は微笑みで、「ボナペティ」の一言。植民統治の賛美ではないが、フランスが残してくれた面影が消えることなく脈々と伝承されていることは、誠に微笑ましい。

 18時10分、ホーチミン・タンソンニャット国際空港到着。19時過ぎ、ホテル日航サイゴンにチェックイン。明日はホテルでセミナー。

絶景求めて、中国人の結婚写真ロケは地の果てへ

 先日旅行中のこと。アイスランドの南海岸、観光名所のスコーガフォスの滝の前で、結婚写真撮影のロケが行われていた。よく見ると、案の定中国人カップルと中国人撮影業者。

 時は8月だが、北極圏手前のアイスランドでは、外気温度摂氏10度以下。海岸沿いの風が強く、滝の下は雨状態の水しぶきが降りかかり、体感温度をさらに低くしている。露出の多いウェイディングドレス姿の新婦を見ていると、こっちが思わずぶるぶるして鳥肌が立つ。

 一生一度の記念とはいえ、よくも耐えられるなあと感心する。周りの西洋人観光客も皆愕然として眺めていた。「風邪を引かないように」という日本人の挨拶がもっともふさわしい場面ではないかと痛感する。

 しかし、寒いのが新婦だけだろう。中国の結婚写真業はいまは、熱い。特に、このようないわゆる海外ロケーションフォトが特に人気を集めている。北はこのアイスランド、南は南極まで、全世界のあらゆる景観がロケ地になる。

 一時期流行っていたパリのエッフェル塔やハワイの海辺がもう古い。とにかく並の人間でなかなかいけないような辺境僻地ほど価値が上がる。その絶景写真で周りに自慢できるからだ。

 そして、撮影クルーも決まって中国人。現地で営業ライセンスをもっているかどうかも怪しいような個人業者も少数ではない。何せ国内業者が集客して現地在住の中国人に投げるわけだから、ビジネスモデルとして流動性が高く、当局はとても補足できない。

 華僑ビジネスのネットワークは恐ろしい。私が常にいっているように、「中国市場」でなく、「中国人市場」だ。市場は属地でなく、属人だ。これを理解しないと、中国ビジネスなどはできない。

 ・・・(以下略・ビジネスレポート使用)

飛行機搭乗の車椅子サービス利用、弱者救済の罠

 最近気付いたことだが、飛行機の搭乗客で車椅子利用者が何となく増えているような気がしてならない。

 先日、某航空会社の便には車椅子の列ができて、一般客の通路にまで侵入するほどだった。数えると、12台。私は密かに何人かの利用者に目星をつけて、搭乗後に追跡観測してみた。案の定、機内で普通に歩ける人も数名いた。

 足ギブス姿や松葉杖使用者、あるいは酷く老衰している様子の人は分かるが、見るには何ら支障もない人で車椅子サービスの利用にはやはり一定の証明を求めてもいいのではないかと。

 私自身も3年前左足下駄骨折(第5中足骨基底部骨折)したとき、数回飛行機の車椅子サービスの世話になった。分かったことは、車椅子の利用はイコールVIP待遇ということだった。出入国も保安検査も搭乗もすべて座ったまま最優先され、待ち時間ゼロ。
 
 楽なのだ。ちょっと年を取っただけで楽なほうにいってしまう。車椅子サービスの濫用はないだろうか。これからは多くの国が高齢化社会に突入する。そのうち車椅子利用者がマジョリティーになることもあり得る。

 思うには、医学的証明が困難であれば、車椅子利用の有料化しかない。弱者いじめとかそういう問題ではない。現にコストがかかっているわけだから、その分本人に負担してもらうのが当たり前だろう。社会底辺の貧困者といった弱者救済とは一線を画しておく必要があるだろう。

高生産性とは?デンマークの空港運営事例

 北欧旅行の際、私はコペンハーゲン空港であることを見た。航空機のプッシュバック作業は、ワンマン(1人の作業員)で行われていた。一瞬自分の目を疑った。

 航空機が出発する際に、まずエプロンからプッシュバックする(機体を後退させて移動する)。日本の場合、通常この作業に係る作業員は2~3名。トーイングカーを運転するトーイングマン1名と、移動する機体と一緒に歩き状況を確認するウォッチマン1~2名という人員構成である。そして、プッシュバックを終了し、飛行機がタキシングを開始すると、作業員全員が整列し、航空機にお辞儀し、手を振るというお馴染の風景である。

 しかし、コペンハーゲン空港では、トーイングカーと航空機の連結・外し、安全確認、トーイングカーの運転等一連の作業はすべて、トーイングマン1人によって行われている(ボーイングB757機事例)。そのうえ、プッシュバックの速度が速い。もちろん航空機へのお辞儀もなければ、手を振ることもない。

 さらに、搭乗口のスタッフも、1人という完全ワンマン体制に徹底している。搭乗券のバーコード・タッチやスマホのモバイル搭乗、すべて乗客のセルフサービス。日本の場合、搭乗口は最低でも4~6名のスタッフがいる。お辞儀したり、ニコニコして挨拶したりする。そんなのはコペンハーゲン空港では、一切なし。

 チェックイン・カウンターはほぼ無人化している。少なくとも欧州内路線は基本的に、事前ウェブチェックインか空港内の搭乗券無人発行機(Kiosk)を利用しなければならない。バゲージドロップオフは少数を除いて、ほとんどの航空会社は、共通カウンターを使うことになっている。日本のようなカラフルな航空会社別のチェックインカウンターなどは存在しない。したがって、空港ターミナルはそれほど広くない。床面積の1平米当たりの生産性は非常に高い。

 総じて私が直観的な見積もりになるが、3人分の仕事があるとしよう。それが日本で5人でやっているのに対して、デンマークでは2人ないし1人で片付けている。管理会計に基づく高生産性運営に徹しているデンマークに学べることがあまりにも多い。

 もう1つは、消費者の教育水準も自助能力も非常に高い。基本的に業者に依存せず、自立・自律型の消費行動に徹している。これに対して、日本で善とされている「高品質・低価格」はまったく時代錯誤の馬鹿げた産物でしかあり得ない。高品質に低価格を求めると、かならず企業労働者にしわ寄せがくる。ブラック企業の温床にもなる。

 では、日本もデンマーク型の高生産性型経営を導入できるかというと、個別企業の単体ベースでは可能であろう。ただそれが社会に拡散浸透しようとすると、これに追い付かない低生産性労働者が直ちに負け組化し、顕在的失業や貧困階級の急増につながり、政治的にも国家ベースでの実現は現状を見る限り困難であろう。これは、日本が抱え込んでいる宿命である。

ビーチサンダルの察見力、旅は発見と内省の時間だ

 このビーチサンダル、どう見ても持ち帰りOKなアメニティグッズではない。

 アイスランド旅行中、ブルーラグーンの宿で温泉プールサイド用のものが客室に備え付けられている。それがえらく気に入った妻はほしいと言いだした。

 ダメだ。それはホテルの備品だと私が断ると、妻は「じゃ、ホテルフロントに聞いてきます」と諦めない。5分後部屋に戻ってきた妻は「フロントは、『It’s yours』と言ってくれましたよ」と得意げに。

 えっ、まさか。どうみても使い捨てとは思えない。「ほら、タグも付いてるでしょう。これ新品なんですよ」と、妻がビールサンダルの靴底に貼り付けられている商品タグを見せてくれた。さすが女性はそういうところ細かくみているなあ。

 妻の察見力には脱帽。経営コンサルタントとして、何事も固定概念にとらわれずに、観察に基づき事実を根拠に結論を導き出す。基本を忘れた私は赤面せずにいられない。大切なことに気づかせてくれた妻には感謝にまた感謝。

 旅は発見だけでなく、内省の時間でもある。故に価値がある。

グリーンランド(9)~疲労困憊、旅程のリスク管理を再考

<前回>

 カンゲルルススアーク空港で足止めを食らう。

 10時間の遅延。何があったのか。機体故障か。機体整備の部品の取り寄せで時間がかかるならやむを得ない。しかし、そうではない。前日の悪天候でグリーンランドの一部の地方で便のキャンセルがあって、その乗客たち(の乗継ぎ)を待つためにコペンハーゲン便の出発を遅らせたのだった。

カンゲルルススアーク空港で待機中

 グリーンランド航空は、大型ジェット機はエアバスA330型の1機しかもっていない。それはコペンハーゲン便にのみ使用されている。グリーンランド各地からプロペラ機で観光客をカンゲルルススアーク空港に送り込んで、そこでまとめてコペンハーゲンまでエアバス機で運ぶ、というシステムになっている。

 しかも、コペンハーゲン便は週3便しか飛んでいないので、乗継ぎできなかった乗客をカンゲルルススアークで最低2日滞留しなければならない。その乗客たちにコペンハーゲンより先さらなる乗継ぎ遅れが生じた場合、航空会社の補償は多額に上る。しかも、今のような夏季繁忙期だと、2日後のコペンハーゲン便も満席状態なので乗せられない可能性が高い。つまり事態は収拾できないほど拡大する。

 だから、何が何でも全員をこの飛行機に乗せる必要があるのだ。たとえ出発を10時間遅らせようと。そもそも航空会社は、10時間くらいの遅延を想定して、週3便という「余裕型」スケジュールを組んでいるのではないかとも疑わざるを得ない。そうならば、「確信犯」だ。

 グリーンランドという土地柄、ビジネス客は希少でほとんど観光客である。季節の影響が大きい。たとえばジェット機をもう1機追加投入した場合、年間の半分が寒冷期、つまり閑散期にあたり、搭乗率がガタ落ちして採算が取れなくなる。そのため機材追加投入の固定費をかけられない、というような事情があったのではないか。

 8月18日(金)、搭乗予定のグリーンランド航空GL780便、カンゲルルススアーク11時40分発が10時間以上も遅延したところ、果たして21時55分に飛んでくれるのだろうか。という大きなリスクを私が抱え込んでいる。航空会社の職員に再三確認しても、「必ず飛ばします」とかなり断定的な回答だった。

 飛ぶだろう。22時台に飛べないなら、10時間以上も待ち続けた乗客にホテル宿泊を提供しなければならない。グリーンランド現地の物価相場では、業者割引が効いても1室あたり最低150ドルから200ドルはする。航空会社にとって当該便の利益がほとんど食い潰される。

 さらに空港内併設のホテルのフロントに照会すると、当日午後現在はすべて満室だという。エアバスA330型1機の乗客数は250名前後、家族同室で計算しても最低100室が必要。だが、ホテルの部屋数は70室、しかもチェックアウト時刻の正午を過ぎても満室状態。つまり、GL780便の乗客を収容する余裕がまったくない。

 まあ、なんとか今夜中は飛ぶだろうと、私は職員の回答よりも、一連の推論を根拠に肯定的結論を得た。

 18時、空港ホテルのレストランでブッフェの夕食を食べ終えた頃、コペンハーゲン便の保安検査が始まった。21時35分、遅延予定時刻よりも20分早く、グリーンランド航空GL780便がカンゲルルススアーク空港を飛び立った。

 翌日8月19日(土)早朝5時45分、飛行機はコペンハーゲン・カストラップ国際空港に到着。予約しておいたクラリオン・コペンハーゲン・エアポートホテルにチェックインしたのは、朝7時。部屋はチェックアウトの12時まで5時間しか使えない。それでも貴重な5時間だ。簡単なメールチェック、次のタイ国際航空乗継便のウェブチェックインを済ませ、そして何よりも熱いシャワーを浴びてベッドに飛び込む。2時間だけでも睡眠を取ろう。

コペンハーゲン・カストラップ国際空港を出発

 8月19日(土) 午後14時25分、タイ国際航空TG951便はコペンハーゲン・カストラップ国際空港を定刻出発。機内食のランチを食べ終えたころ睡魔に襲われ、そのまま熟睡。

 早朝、スープの良い香りで目が覚めると、隣席の乗客がラーメンを食べていることに気付く。客室乗務員に聞いたら、リクエストあればインスタントラーメンを提供していると。早速トムヤムラーメンを注文。いやいや長旅途中の温かい汁物は旨いこと・・・。

 8月20日(日)、早朝5時45分、TG951便はバンコク・スワンナプーム国際空港に到着。2週間ぶりのアジア。ラウンジで休憩して、3度目の乗継ぎで朝9時5分発のタイ国際航空TG415便に乗り込む。正午過ぎ、クアラルンプールに帰着。

 2泊3日の移動。さすがに疲労困憊。何よりもグリーンランド航空遅延の1件で、大きな教訓を得る。今回は幸いにも10時間の遅延だけで無事乗継できたものの、リスクがこれで消えたわけではない。旅程を立てる際、深刻な遅延に備え、全面的なリスク管理が欠かせない。

 旅はやはり楽しい。知見を広げ、仕事上のヒントも得られる。

<終わり>

番外編(1)~ビーチサンダルの察見力、旅は発見と内省の時間だ
番外編(2)~高生産性とは?デンマークの空港運営事例
番外編(3)~絶景求めて、中国人の結婚写真ロケは地の果てへ
番外編(4)~少子化は好機、日本は高生産性自立型社会目指せ
番外編(5)~日本人よ頭冷やせ、真の高福祉国家とは何か
番外編(6)~サバイバルを美徳とせよ、トリクルダウン理論の真義

グリーンランド(8)~帰途多難、大幅遅延で乗継不能も

<前回>

 アイスランドとグリーンランドの2週間の長旅を無事終え、帰途につく。地球の裏側から、北極圏から赤道直下までの移動はまた大変。飛行機の乗り継ぎは3回、空港1泊、機中1泊というカレンダー上3日がかりの大移動である。

 8月18日(金)早朝5時起床、5時半朝食。6時、ホテルの送迎でイルリサット空港へ。まずは、イルリサット発カンゲルルススアーク(Kangerlussuaq)経由のコペンハーゲン行き便をチェックイン。前日ウェブチェックイン済みなので、荷物を預けて手続終了。

イルリサット発カンゲルルススアーク行GL501便の機材

 グリーンランド航空GL501便のプロペラ機は、定刻通り7時20分イルリサットを出発し、8時10分カンゲルルススアークに到着。到着すると、すぐにコペンハーゲン行き乗継便の使用機材状況にチェックを入れる。これも定刻通り、コペンハーゲンから飛来する機材の到着表示が出ていた。ひとまず安心。

 10時、使用機材が着陸、駐機スポットに入ることを確認。予定乗継便は、グリーンランド航空GL780便のカンゲルルススアーク11時40分発だから、1時間半以上の整備時間もあれば、間違いなく定刻出発できるだろうと読んだ。

カンゲルルススアーク発コペンハーゲン行GL780便の機材

 しかし、私の読みが見事に外れた。モニターには「Delay」表示が出、新しい出発時刻は12時55分。1時間15分も遅延か。到着が予定時刻の20時よりも遅れて21時台になり、コペンハーゲンのエアポートホテルにチェックインして、レストランで夕食が食べられなくなる。それでも、空港で適当にサンドイッチでも買って部屋で食べればいい・・・。

 そんな私はまたまた甘かった。11時頃、モニターの「Delay」時刻がなんと、12時55分から21時55分に変わった。21が12の入力ミスではなかろうかとカウンターに問い詰めると、間違いなく夜の21時55分だった。10時間の遅延、冗談じゃない。といっても、否応なしにカウンターから食事券が配布され、しかも昼食と夕食の2回分。これで確定だ。

 遅延による待ち時間の長さよりも、さらなる疑念が持たれた。それは、3度目の遅延はあり得るかだ。コペンハーゲン発のタイ国際航空の乗継便に間に合わないリスクが生じたからだ。3度目の遅延でさらに数時間遅れた場合、バンコク便を逃がすことになる。深刻な問題だ。

 代替便で先発のコペンハーゲン行便はないかと、チェックする。結果はすぐに分かった。――ない。孤島グリーンランドの寂れた空港を飛び立って欧州大陸本土に向かう飛行機は1日1便あるかないかの世界であった。アイスランドのレイキャヴィーク行き便も出発が遅れ、アイスランド経由のコペンハーゲン行き案も排除された。

 絶望的だ。落ち込んでも仕方がない。とりあえずご飯を食べようと、もらった食券でランチを取る。チキンカレーがまあまあ美味しかった。

<次回>

グリーンランド(7)~氷山の一角と氷山の転覆、哲学的示唆

<前回>

 8月17日(木)、グリーンランド西岸イルリサットの海から北上する船旅に出る。前夜から天気が崩れ出し、当日はあいにくの雨天、いやそうでなく、幸運にも雨天に恵まれる。

 まずは年間日数の3分の2が雨や雪のアイスランドでは、奇跡的にも前後が雨で滞在中の数日だけが快晴だった。グリーンランド到着後の氷河トレッキングも雨後の好天だった。今回の2週間という長旅中、たった1日だけの雨ということで文句を言ったら罰が当たる。

 「皆さんは幸運です。これがグリーンランドの本来の姿ですから」。ツアーガイドのティナーさんがやや興奮気味に語る。商売上のパフォーマンスなのかもしれないが、嘘ではない本当の一面もあるので、そのまま受け止めておきたい。

 船は出港してエキ氷河(Eqi Glacier)を目指して一路北上する。低く垂れ込めた厚い灰色の雲をバックに海がやや荒れ気味。海面に浮かぶ氷山は冷たい青灰色を呈し、怪しい透明感を帯びている。

 いや、「海面に浮かぶ」という表現は、単なる私の視覚による直観的な反映にすぎない。まさに、「氷山の一角」というだけにその氷山の9割が海面下に不可知の形で存在しているのである。

 専門家によると、氷山が氷棚から崩落したとき、周囲の環境と静力学的平衡が機能し、一般には氷山の10分の1が海面の上に残り、残りの10分の9は海面下に沈むという。氷は水面に浮かぶというわれわれの常識、そして肉眼の視覚による直観的写像に基づけば、ついつい「海面に浮かぶ氷山」という論理的誤謬に至る。

エキ氷河到着

 そして、さらなる変化が海面下で起きる。海中では氷山が溶け始める。要するに同じ氷山でも海面上の部分が空気、海面下の部分が海水という異なる外的変動要因をそれぞれ抱えているのだ。そこで、海面下の氷山が徐々に溶け始め、ある時点で全体的バランスが崩れ、氷山の上下が逆さまになるそうだ。

エキ氷河

 このいわゆる「氷山の転覆」現象はめったに目撃することができないので、あまり知られていないようだ。「氷山の一角」から本質的な部分に突っ込むと、水面下の変化の進行から、最終的に「氷山の転覆」という均衡の崩壊に至る全体像が浮かび上がる。

 これは哲学的な示唆であり、様々な事物に共通する基本原理として肝に銘じたい。

 昼、船はエキ氷河に到着。船上でランチを取り、1時間半ほどの停泊を経て帰路につく。夕方、イルリサットの小さな港に帰着したとき、小雨がまだ止んでいない。

<次回>

グリーンランド(6)~極寒の地、カラフルな街並みと白夜

<前回>

 イルリサットの家々は、カラフルだ。北極圏、暗くて灰色のイメージがある。長い冬と極寒、陰鬱な日々が続く中、視覚や気分を明るくしてくれるのがこの鮮やかな街並みである。

 そして短い夏には、白夜が訪れる。ミッドナイトサンといって、真夜中の太陽が極北の地を照らし、生命力の回復を謳歌しようとする。けれど、その太陽の光はなぜか切なく、冷たさすら感じさせるのである。

 暖かさを与える前に、白夜の太陽はまず寒さと戦わなければならないからだ。光と熱は必ずしも共存しない。白夜はある意味でその相反関係と営みを示唆するものだ。

 人生には漆黒の闇がしばらく続くと、幻想的な白夜が訪れることがある。それが暖かさを伴わない明るさだったりし、タンゴのように情熱的なリズムに合わせて一縷の切なさが妖艶に踊る。

 青春、朱夏、白秋、玄冬。人生は一度限りの四季に喩えられつつも、角度を変えてみれば、光と闇の移り変わりとも見て取れる。人生は苦痛の連続だ。故に裏返せば、何をすればよいかを考え抜くのが人生なのだ。

 闇にただひたすら堪えるよりも、そこで心の白夜を自ら作り出すことこそが積極的なニヒリズムではないか。その白夜の太陽は幻想的で弱々しくも冷たいかもしれない。でも、少なくとも漆黒の闇よりはましだろう。

 光さえあれば、カラフルな色彩も意味を持ち始める。積極的な人生とは意味を作り出すものだ。

<次回>

グリーンランド(5)~青天の霹靂、北極圏にも中国人爆旅

<前回>

 私の場合、食べることが好きで、旅に出る前に事前調査で食べたい食材や料理をリストアップするようにしている。今回、北極圏のグリーンランドでの食リストに上がっている食材品目は、以下の通りである――。

 ズワイガニ、ジャコウウシ、オヒョウ、トナカイ、北極野ウサギ、ライチョウ、オオカミウオ(狼魚)、ウニ、レッドフィッシュと並んでいる。

 その多くが食べられなかった主因は、宿泊ホテルであるアークティック(Hotel Arctic)のレストランにあった。ホテル・アークティックのメインダイニング「Restaurant Ulo」のレギュラーメニューを事前確認したところ、以上の食材のほとんどが扱われていることで、安心していた。

 しかし、チェックインすると、悪いニュースを知らされた。――滞在中の2泊は、「Restaurant Ulo」は中国人団体ツアー客による貸切のため、一般営業を中止すると。

ホテル・アークティックの客室から氷河がみえる

 青天の霹靂。予約満席なら時間帯をずらすとか、なんとか哀願して入れてもらえる手立てがあったかもしれないが、貸し切りだと如何しようもない。ルームサービスやカフェで注文を取り寄せることも打診したが、ダメだった。両日ともレストランの厨房は貸切ブッフェしか用意できない。

ホテル・アークティックからの展望

 運がよほど悪かった。と思ったら、そうではないようだ。イルリサットの街で一番のホテル、アークティックは、もう中国人団体ツアー客に乗っ取られたことは、現地で誰もが知っている事実だった。そこまで事前調査ができていなかった私自身の責任だ。

 ホテルの入口に掲示されている総支配人の挨拶文をみてもわかる。英語と中国語がメイン言語として真ん中に併載されている。両側に欧州各国語があっても、日本語はない。

 爆買の次は爆旅。その爆旅先ももはやパリやロンドンにとどまらず、北極圏、地の果てまで浸透してきているのだ。ホテルとしては、金を落としてくれる中国人客を優先させる方針も、非難されるべきではない。商業的観点からすれば、むしろ正しい経営判断なのだと私も思う。

 嗚呼。私の美食夢が無残に打ち破られた。夕食の時間帯、ホテルのメインダイニングは、中国人専用となり、他の客は小さなカフェに追いやられ、限られたメニューから選ばざるを得なかった。

 まあ、食べられるだけでも幸運だったのかな・・・。

<次回>