秘境リペ島(4)~刺身食い、リスクとリターンの経済学

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 妻は大の刺身好きで世界のどこを旅行しても、刺身を食べたがる。私はもちろん好きなことは好きだが、食中毒が怖くて躊躇ったりもする。前日の夕食、シーフード・レストランで中国人客グループがあれだけ美味しそうに刺身を食べていたのを見て、ついに我慢しきれなくなり、刺身を食べようと決意。

 さあ、人生に限りがある。食べ物は、食べたいときに食べよう。少々リスクがあっても、いちいち恐れていたら人生がつまらない。いつも言っているように、世の中には事実がなく、解釈のみだ(ニーチェ)。これも一種の解釈。リぺ島滞在2日目の夕食は、Walking Street沿いにあるシーフード・レストラン「King Crab」で刺身を食べることにした。

King Crab Restaurant

 海外での刺身食が危ないと言っても、日本国内でも同じように食中毒を起こす。つい今年の年始に事件があった。福島市の高湯温泉「花月ハイランドホテル」では、2023年1月2日と3日に提供された刺身で客111人が下痢や嘔吐などの症状を訴えたという。患者の多くが食べていた刺身が原因の食中毒と診断された。

 刺身の取り扱いに慣れていない海外のレストランでは、日本よりもリスクが高いといえば、それはそれで納得する。しかし一方、慣れていないからこそ、問題を起こさないように慎重に扱うという仮説も成立する。世の中は解釈1つ変われば、結果も変わる。結局、確率の問題、そして運もある。

 リスクとリターンの関係。刺身の場合は、目先の確実な利益を手に入れる代わりに、数時間後にあるかないかという不確実なリスクを引き受けるかどうかの計算と意思決定である。今回はリターンだけになった。ロブスターと魚の刺身が旨い。もちろん食あたりはなく、運が良かった。

 ちなみに、ロブスターは刺身以外にトムヤムクンも作ってくれた。一石二鳥。ご馳走様でした。

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