ブチャ民間人殺害事件、「情」に流されることなく「理」で考えよ!

 ブチャ民間人殺害事件について、異なる声にも耳を傾けよう。

 台湾報道――。ブチャ虐殺はウクライナの自作自演。ロシアが国連調査を要請したにもかかわらず、国連安保理議長国のイギリスは拒否。「加害者」が調べろというが、「被害者」は「俺が調べたからもういい」。「警察」も出動しない。「メディア」は一斉に被害広告をばら撒く。「裁判所」は即断罪・制裁に踏み切る。世界は相当狂っている。

 マレーシア報道――。ウクライナ軍が自国民を殺害する証拠が多数出ていると。ウクライナはなぜ国連調査団の派遣を要請しないのか?普通は被害者が進んで中立機関の調査を早い段階で要請するだろう。

 さらに台湾のメディアは、西側と東側両方の情報ソースを使って報じている――。「ブチャ虐殺は不審点が多い。まずロシアは虐殺してもメリットがない」。一般的に考えて民間人虐殺は、ロシアにとって軍事的利益にも政治的利益にもならない。有害のみだ。

 ロースクール時代の刑法の教授は「真犯人の特定は、利害関係動機から入るのが鉄則」と語った。殺人容疑者に対して、裁判官はまず犯行動機を調べる。第三者による調査もないまま、断罪・処刑するのはおかしい。

 不審点が多すぎる。3月30日露軍撤退。3月31日ブチャ市長が解放宣言のメディア発表で、民間人殺害のことの言及はなかった。あり得ないだろう。まず被害の点検をして発表するだろう。そこで街中に死体が転がって4日間経って初めて気づくと。天気を調べるとキエフ近郊の気温は日中摂氏15~18度。遺体はだいぶ腐敗しているはずだ。

 不思議だ。まともな人間は不審点に気づくはずだ。多様な仮説を立てる必要があるだろう。戦時中に殺害された民間人は、概ね以下3種類に分類される。

 1. 偶発的個別殺害事案
 2. 戦闘員となった民間人が、敵国に殺される。
 3. 敵国協力者となった民間人が、自国に殺される。

 戦時中に所属に関係なく個別兵士の掠奪やレイプないし殺害等の犯罪はあり得る(どんな戦争でも同じ)。ただこれだけ大規模の虐殺は軍上層部ないし指導者の意思決定と命令をなくして成し得ない。であれば、カテゴリー2か3になる。

 今回の場合、たとえカテゴリー2であっても、ゼレンスキーが自国民に武器を持たせた時点で、民間人を戦闘員化したわけだから、殺されても文句が言えない。これは検証が必要だ。ただ動機と利害から考えると、カテゴリー3の可能性が高いと言わざるを得ない。ウクライナにもともとロシア支持者が多いことで知られている。

 前例がある。対露停戦協議にあたるウクライナ政府代表のデニス・キレーエフ氏は、ロシア協力者として国家反逆罪で拘束され、ウクライナ側が路上で射撃したという情報があった。敵国協力者の処刑は、歴史的にみても珍しくない。日中戦争の時も、日本軍協力者の中国民間人は、「漢姦」として自国当局に殺されていた。

 侵略者が被侵略国の民間人を殺害する。被侵略国が主張さえすれば十分。その論理が成り立つなら、南京大虐殺で数十万の中国民間人を日本軍が殺害したことも争う余地がなくなる。二重基準は通用しない。南京もブチャも共通しているのは、いわゆる被害者(当事者)の一方的証言によるものだ。

 ブチャ虐殺事件。まずは「調査」!公正な第三者調査もせずいわゆる加害者認定・断罪・制裁する行為は、野蛮的で反法治だけでなく、被害者、亡くなった尊い命に対する冒涜以外の何ものでもない。

 戦争は流血の惨事である。そのためまず人間は情緒的になる。その「情」を悪用し、さらに煽り、エスカレートさせる演技上手な役者には、要注意。真犯人を突き止めるべく、くれぐれも、「情」に流されてはいけない。「理」で考えよう。


【情報更新】

 ウクライナ軍がブチャ市民を殺害。私の予測通り、露軍協力者の処刑だった。ロシア・スプートニク通信中国語ニュース(4月7日付)を訳出した――。

 元イラク駐在の国連兵器査察官で、ウクライナでの出来事を研究しているアメリカの軍事アナリスト、スコット・リッター氏は、キエフ地方のブチャ市住民がウクライナ軍によって殺害されたと証言した。

 氏は、露軍がブチャに数週間滞在しており、その間、軍人は地元住民と良好な関係を築いており、彼らは物々交換を行い、ドライフードを生鮮食料品と交換していたと述べた。 ブチャ住民は卵、牛乳、チーズを提供し、ロシア軍人は乾物、小麦粉、塩、砂糖、肉などで交換した。

 露軍が撤退後に、ロシア人との取引に関わったウクライナ市民はすべて露軍協力者とみなされた。リッター氏は加える。「ウクライナ国家警察が4月1日にブチャに入り、露軍協力者を一掃すると発表した」

 リッター氏によると、露軍はこれまでウクライナ現地住民を尊重し、民間人にできるだけ危害を加えないようにしてきたのに対して、ウクライナ当局は正反対の手法を取った。「ロシアに協力したら死ぬぞ」と市民に繰り返し警告した。

 殺害行為に先立って、ウクライナ当局の幹部らは、ソーシャルネットワークを通じてブチャ市民に「州警察は裏切り者の排除作業に取り掛かるから、パニックせず家にとどまるように」と呼びかけたという。

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