ローマ帝国の属州統治術に学ぶ、海外人事管理の極意

 海外進出した日系企業は、資本力で現地人を従業員にし組織のなかに納めながらも、異文化を抱えるこの人たちの管理に大変苦労している。そこで、歴史上のグレートパワーがいかに勢力拡張の結果である属国での統治に取り組んだか、その仕組みの研究に大きな価値を見出すべきだろう。

 何と言っても筆頭に上がるのがローマ帝国の占領・統治政策である。ローマ帝国は軍事力で制覇した土地を属州化し、その戦後処理ないし占領政策が実に面白い。

 自らの政治システムをそのまま敗者側に押し付け、強要することなく、あくまでも現地民の自らの管理に任せ、自治を認めたのであった。さすがに属州総督は、ローマ帝国の皇帝や元老院が任命するが、地方自治・分権の度合いが非常に高い。

 実体が伴う高度の自治権の付与は、ローマ帝国の自信の表れである。反乱を起こすことなく、安定した行政統治を属州が自ら行えるよう、それを裏付ける一連の仕組みとは何か?

 まず、属州の有力者たちにローマ市民権を与え、その中でも指導者格のいわゆる有力者中の有力者には、元老院の議席まで提供する。さらに有力者の子弟をローマやその他イタリア本国に留学させる。これは親ローマの次世代の育成だけでなく、ある種の人質でもあるのだ。

 上層階級だけでなく下層階級にまで同化政策が行われる。属州の下層階級者には、ローマ軍への入隊という門戸が開かれていた。一気に正規兵にはなれないが、まず補助兵になって25年の兵役を終え、除隊する際にローマ市民権が付与される。なかにも優秀な人は、除隊を待たずにローマ市民権を与えられ、正規兵へと昇格する。

 ローマ帝国のこの一連の占領政策・統治システムには、われわれが何を学べるのか。海外経営・人事管理という実務にどのように活用できるのか。面白いヒントがたくさん隠されており、一つひとつピックアップして来年、勉強会にしたいと思っている。

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