JETROエコシステムツアー(4)~マレーシアはなぜ人材育成がうまくいかないか?

<前回>

 締めくくりには、マレーシアはなぜ人材育成がうまくいかないかという命題に戻ろう。詳細にわたる研究を必要とする命題で、ここの限られた紙幅のなかには触れる程度にしかできない。

 人材育成以前の問題だが、人材・頭脳の海外流出である。海外で働くマレーシア人がすでに100万人を超える現在、エース級の人材はほとんど国内にとどまらず、海外特に隣国のシンガポールに流出してしまっている。英語でいうと「Talent pool shortage」という人材備蓄の枯渇問題が深刻だ。

 次の「なぜ」。なぜ、人材がどんどん海外に行ってしまうのか。私は3つの仮説を立てて説明したいと思う――。

 1つ目は、教育や雇用などさまざまな面でマレー系住民を優遇するブミプトラ政策。マレー系住民は相対的にレベルが低く、特別な配慮や救済が必要だという逆差別要素が示唆され、機会均等を奪う政策である。このような自由競争を否定する弱者救済政策の下で、逃げ出すのは強者のほうだ。

 2つ目は、マレーシアの賃金水準の低さ。優秀な人材なら、隣国のシンガポールや香港、最近上海など中国の都市部でもマレーシアよりはるかに高い賃金がもらえるから、マレーシア国内にとどまるのは馬鹿馬鹿しくなる。マレーシア人のほとんどが英語を自由にあやつれるし、特に中国語のできる華人系にとってみれば、海外のほうにはよほど多くのチャンスが転がっているわけだ。

 3つ目は、企業の人事賃金制度の問題。上記2つの問題は外部要因であるが、実は解決できない問題ではない。企業内部の評価・賃金制度で是正すれば、一部の人材が流出せず、マレーシア国内にとどまることも実現し得るだろう。ただ現状としては多くの企業はマレーシアの低賃金をコスト削減のツールとして使っているだけ。特に日系企業の場合、本国から年功型の人事制度を持ち込めば、優秀な人材は日系企業を一層敬遠する。

 マレーシアで必要とされる企業の人事賃金制度は、率直にいってしまえば、ただひたすら能力や成果を評価するものでなければならない。企業内格差を悪とする前提をなくし、あるいは必要悪としなければならない。

 大学の新卒に2500~3000リンギットという現状の月給では、優秀な人材はやってこない。5000どころか8000や1万リンギットの高給を思い切って出すと、企業レベルではこのような制度を導入できるか。

<終わり>

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