マレーシアは物価安くて不動産相場の高い国にはならない

 本日付け(4月6日)、マレーシアのメジャー華字紙「南洋商報」は、トップ記事に「今年の不動産市場依然低迷、デベロッパー見解」を掲載し、2019年マレーシア不動産市場展望調査の結果として、「ほとんどのデベロッパーは、今年の不動産市場がさらに低迷すると見ている」と報じた。

 私は一貫してマレーシアの不動産市場を悲観視している。さらに外国人購入最低限の100万~200万リンギット域では、有望な物件はほぼ皆無に近い。需要をみても、このあたりの高級物件は、供給がはるかに需要を上回っている。一部の地域では、すでにゴーストタウン化し始めている。

 今後も、マレーシアの経済は大きな飛躍的な発展はあり得ない(私見だが)。だからこそ、大きなインフレもなく、いまでも物価が安く、住みやすい国として、移住先人気度ランキングで引き続き1位を維持してきた。

 これを目当てに移住しようとする(移住した)日本人は、一方では不動産相場で投資収益を狙おうとするならば、甚だ矛盾となる「相反する希望」である。外国人が投資できるような高級物件の相場が上がれば、いまのマレーシアは存続できなくなる。政府は早い段階で抑制政策に乗り出すだろう。このへんは、マハティール首相がすでに明言している。政策の方向性は、後継者でも大きな変更ができないものだろうし、基本的に不変不動の国策であろう。

 日本人の皆様も、しっかりこの事実を認識したほうがよい。結局、外国人によるマレーシア不動産投資で儲かっているのは、仲介業者にほかならない。

● 反論への反論

 マレーシアの出生率が高く、将来的に不動産の需要が高まるという反論もあるだろう。検証してみよう。

 マレーシア統計局は、2016年の合計特殊出生率(15~49歳の女性1人が出産する子どもの数)が過去最低の1.9だったと発表した。15年の合計特殊出生率は2.1で、0.2ポイントの下落だった。この点はさておきながら、高い出生率という前提で計算してみよう。

 結論からいうと、マレーシア人の若者がいくら増えても、需要が集中するのは、30万リンギットから50万リンギットの物件であって、外国人が(法令最低制限)買っているような100万リンギットや200万リンギットの高級物件ではない。買えないからである。

 2016年のマレーシア人の平均月収総額は、2463リンギット(2017年5月29日付けNNA記事)。3000リンギットで計算した場合、100万リンギットの物件は28年分の収入にあたる。月収30万円の日本人サラリーマンにとっては、1億円の物件に相当する。普通に買えるのだろうか?

 日本の場合、不動産購入ローンの審査基準は一般的に年収の7倍からせいぜい8倍程度が相場。これで考えると、マレーシアでは30万リンギット程度の物件がマックスではないか。日本に置き換えると、月給30万円のサラリーマンには3000万円の物件が一般的だということになる。

 100万リンギットの物件をマレーシア人の一般サラリーマンでも買えるようになる。そのために、平均月収が1万リンギットに上がるのが基本条件だ。要するに、今の収入の3倍~4倍になることだ。であれば、物価は最低でも倍になるだろう。いまのマレーシアの物価が倍増すれば、日本人はMM2Hを申請して住むのだろうか?

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