安月給にバカ上司、不幸なサラリーマンが幸せになる方法

 「私の給料が安い」

 人事コンサルティングをしていると、現場で従業員から最も聞かされることだ。むしろ、「私の給料が高い」あるいは「私の給料が適正だ」という人がいたほうがおかしいくらいだ。

 なぜなら、余所と比べるから、いつも嫉妬や不満をもってしまうからだ。自分や自社より給料や福利待遇が良いところを探すまでもなく、いたるところにある。社内を見回しても、自分より働いていないやつの方、給料が高かったりする。それは、人間を不幸せにする源泉である。

 「不公平だ」

 ついに不満をいい、抗議をしたくなる。そこで質問。世の中、未だかつて「公平」たるものが存在したのだろうか。「公平」は、人間が描いた理想像に過ぎない。いや、そもそも、人にとって尺度も違えば、「公平」の定義さえ定かではない。裁判の結果が出れば、垂れ幕を掲揚する。勝ったら「勝訴」、負けたら「不当判決」。裁判の結果でさえ、当事者の立場1つ違えば尺度も違ってくるくらいだから、世の中に当事者全員が「公平」と納得することはあり得ない。

 私自身もサラリーマン時代、他の社員の処遇を見て、不公平と思ったことは何度もあった。そこで、悟った(悟るほど難しいことではないが)出口は3つある。

 ① 他を見ないこと、あるいは自分より下の方を見ること。
 ② 会社に要求を提示して改善させること。
 ③ 最後の手は、会社を辞めること。

 そして、この3つのことは相互関連していることが分かった。その組み合わせによって、サラリーマンの幸せ度が決まる。

 ▼ 能動的幸せ者。①に徹し、他を見ない、あるいは自分より下の方しか見ない人は最も幸せな人だ。
 ▼ 受動的幸せ者。②会社に要求を突きつけてダメだと諦めて、①に戻る人、あるいはすべての辛酸を嘗め尽くして①にたどり着く人、つまり、苦痛を味わって幸せになる人だ。
 ▼ 不幸者。①も②も③もできない人は一番の不幸者だ。

 ちなみに、②か③で一時的に成功しても、また不幸せのサイクルに陥ることはほとんどだ。給料が安いといっても、他人と比べて安いと感じてしまうのがまだしも、金額が確実に減少し、所得減となれば、それはまさに不幸せのどん底だろう。

 私自身も苦い経験をもっている。海外駐在から日本に帰任したとき、給料は4割減になり、物価水準のギャップを加味すると、所得が半分以下に減ってしまうことになる。不幸せ感の頂点に達した。給料が安くても、やりがいのある仕事であれば、何とかやっていけるが、それもダメだと分かった時点で、残される道はたった1つ、会社を去るしかない。

 私自身は、上司や会社に給料や待遇の改善を要求したことは一度もない。というのも理由がある。

 会社と会社の間で商取引があるように、会社と従業員の間には業務成果の取引がある。ここで注意したい。「労働力」ではなく、「業務成果」の取引であること(日本企業の終身雇用制度下では異なる解釈になるかもしれないが)。労働力自身は企業にとって価値はない。その労働力が業務成果に具現化されたときはじめて価値が評価されるのである。

 企業間の商品の取引では、価格の交渉が入る。会社と従業員の業務成果の取引にも同様に価格交渉が存在する。その価格は、給料である。従業員が会社にその業務成果をいくらで売れるのか、これは市場相場、バリューの評価、あとは双方の交渉次第である。おいおい、ちょっと安過ぎではないかという従業員に、じゃ、あなたはいくらほしいかと会社が逆オファーを求める。そこで従業員の言い値、つまり業務成果の価格提示を会社が認めなかったら、交渉は失敗する。すると、従業員に残される道は、他の買い手企業を探すほかない。

 私は交渉が嫌いだ。サラリーマン時代もそうだったが、経営者になっても変わらない。自社商品やサービスの価格については、交渉に応じない。価値(バリュー)を認めてくれる顧客としか取引しない。交渉には大きな取引コストがかかる。取引コストを省く。広告もしない。

 ただ、私は自分の経歴や語学力を過去の所属企業にアピールしようと試みたことがないわけではない。そこで、上司からの回答はたった1つ――「So What?」。「だから、何?」というのは、徹底的に結果を求める問いである。

 あとから、勉強して分かったのは、「So What?」というのは、ロジカルシンキングの基礎だったこと。自分の能力やスキルよりも、それらをどう活用し、会社にどのような形で貢献できるかを提示することである。「上司は人を見る目がない」と思ったら、それで終わりだ。人を見る目をもたない上司が世の中にたくさんいる。そこで、その上司に見る目を持たせようではないか(できるなら)。そうしないと、永遠に幸せになれない。どうしたら、上司を変えることができるのだろうか。そこもまた、ロジカルシンキングなのだ。

 「ロジカルシンキング」が私の人生を変えたといっても過言ではない。だから、私が教えているマネージャー育成研修コースのなかでも、「ロジカルシンキング」を最重要科目としている。

 「ロジカルシンキング」を身につけずに幸せになる方法はたった1つ――運任せである。

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