新型コロナウイルスについて、岩田健太郎教授が発したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセスの現場レポートについて、高山義浩氏がフェイスブックに反論する内容を記載した。
★高山氏の論点、以下7点に整理してみた。
① 下船者の発症、地域感染拡大という2つのリスクを否定していない。
② 下船者のほとんどは感染していないが、発症者が出る可能性はある。ただし、偽陰性の可能性があっても、極めてウイルス量の少ない無症候性病原体保有者である。
③ 電車やバスなど一時的な空間共有をしたとしても、感染を広げるとは考えにくいため、下船者の公共交通機関は妥当だ。
④ 自宅帰還後の発症は、在宅生活を推奨、症状があれば保健所に連絡するようお各人に依頼済み(強制なし)。
⑤ ほとんどの人は発症しない。恐れる必要はない。
⑥ 14日間の船内隔離済み、PCR検査で陰性確認済みの者は、厳格な条件をクリアした人々であるから、安心。
⑦ 人権にも関わる問題であり、隔離は濫用すべきではない。さらに長期間の隔離継続もできない。
★私は医療専門ではないが、一般論で論理的立場から4点の見解を申し述べる。
1.まず、①リスクを認めながらも、⑦法的社会的に隔離継続ができないという事情から、今回の下船措置は決して責任ある厳格な措置ではないことを氏が認めた。
2.次に、②では下船者から発症者が出ても、微弱無症候性病原体保有者であり、③一時的な公共交通機関の利用では感染を広げることは考えにくい。さらに、④自宅帰還後の措置は各自の自律に委ねられている。
2-1. 微弱無症候性病原体保有者の拡散可能性(確率など)と拡散シナリオの科学的論証がなされていない。
2-2. 一時的な公共交通機関の利用は問題なしとの結論を導き出す科学的論証がなされていない。
2-3. 一時的な公共交通機関の利用を超えた社会的活動をしないことが担保されていない。
2-4. 帰宅後の措置も推奨ベースで、自宅滞在を超えた社会的活動をしないことも、症状が出てすぐ適正措置をとることも、担保されていない。
2-5. 自宅滞在中に家族や関係者への拡散リスクについても言及されていない。
2-6. 上記によってリスクの拡大悪化が現実になった場合の責任所在が不明である。
3.⑤発症しないから、恐れる必要はないとしている。その科学的根拠があるのか、具体的に言及されていない。恐れる必要がないとした以上、周りが安心して接触ないし濃厚接触した場合のリスクは?その責任所在が不明である。
4.⑥14日間の船内隔離済み、PCR検査で陰性確認済みの者は、厳格な条件をクリアした人々であるから、安心だとしているが、問題が多い。
4-1. 船内隔離は明らかに専門的医療隔離と異なっており、ましてゾーニングが不明確だったという指摘も提起されていた。14日間の船内隔離を前提とするのが科学的だとすれば、米国等諸外国はなぜ帰国後も下船者に別途14日間隔離を実施しているのか、この辺の説明がされていない。
4-2. PCR検査の科学的信頼性を別として、その検査後に感染した場合を想定していないのか、この辺の説明がされていない。
4-3. 上記の疑問を残したまま、安心と結論付けてよいのか。
日本との対比で台湾をみてみよう。ダイヤモンド・プリンセス下船後、チャーター機で台湾に帰国した台湾人19名。台湾では、一次検査で陰性が判明した時点で、24時間の間隔をおいて二次検査を行う。2回の検査共に陰性結果が出ても、自由行動になるわけでなく、14日の隔離に入るという。
日本の場合、バスで横浜駅まで送って、「はいお元気で」と解散。とんでもない。日台のレベル差が一目瞭然。このたびの新型コロナウイルス疫病対策に関して、日本は台湾の足元にも及ばず、マレーシアやベトナムのレベルにも到達していない。と、私が感じた。
ダイヤモンド・プリンセスに乗船していた台湾魔術師の陳日昇氏は、下船後台湾のチャーター機で帰国した。彼のコメント――。「台湾の土を踏んだ瞬間、安心感が一気に炸裂。船上で受けた日本の検疫に比べ、台湾の方が全然ランクが上だ」(2月22日付、三立新聞網)
これで、厚労省が反論するのだろうか。
<2月23日補記>
栃木県は、船内の検査で陰性とされ、下船した60代の女性が、22日になって新型コロナウイルスへの感染が確認されたと発表した。クルーズ船から下船した人の感染確認は国内で初めて。結果的に、岩田医師の懸念と、上記私の4点の見解はやはり正しかった。おそらくこれからどんどん同様事例が発生するだろう。