新型コロナ危機、ベトナムの優等生ぶりは本物か?

 ベトナムでの新型コロナウイルスの感染者数は16人で、2月13日以降、新たな感染者は報告されていない。感染者16人のうち15人は治癒している(2月22日付、ベトナム国営通信(VNA))。

 ウイルスの感染者数や死亡者数について、中国はたびたび統計基準を変更したり、意図的にデータを操作しているのではないかといわれている。では、ベトナムのデータは真実を反映しているのか。しいて言えば、このたびのベトナムの優等生ぶりは本物なのかという問いである。

 まず中国に目を向けると、データの信憑性が問われ始めたころから、武漢をはじめとする国内における情報暴露や内部告発がネット民によって行われた。「真相」を伝える動画や文字投稿が多数見つかっては、当局に削除され、言論が封殺されてきたともいわれている。また一部の当事者が身柄拘束されたり、処分を受けたりすることも報じられた。

 さらに海外の中国語や英語のメディアも相次いでこれらを報道し続けてきた。もちろん、これらの暴露報道の真偽判断を別として、「諸説」の存在それ自体が紛れもない事実である。これに対して、ベトナムに関しては、ベトナム語情報を含めて広範囲の精査をしたわけではないが、現在のところ、少なくとも「諸説」が入り乱れている状況ではなさそうだ。

 インターネットにおける情報遮断に関しても、中国のほうが断然厳しい。これに対してベトナムでは、フェイスブックやツイッター、Google、YouTubeなどはほぼ自由にアクセスできる。この辺を加味すると、ベトナムの公式発表データは一定の信憑性があるとみてもよさそうだ。

 ただ、 ベトナム通商産業省は2月20日、経済の悪化を防止するため、タンタインの国境を再開し、中国との越境貿易規制を緩和したと発表した。ベトナムの製造業は原材料や設備を中国に依存している。また農産物の主要な輸出先でもある。そうした通商緩和によって、中国からウイルスが流入しない保証はどこにもない。今後は要注意である。

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