マレーシア長期滞在ビザMM2H申請の大量拒否、対策とは?

 却下。マレーシアの外国人向けの長期滞在ビザ「マレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)」の昨年後半以降の新規申請が、90%以上却下された。多くの申請者や代理業者が悲鳴を上げている。「なぜ」と当局に問い詰めたい気持ちは誰もが同じだ。

 まず、法律面からいうと、外国人の入国や居住を認めるビザの発給については、主権国家の自由裁量行為に属し、しかもビザは外交上ないし国際政治上、機微な部分に係わることもあるため、その運用基準は一般的に非公開となっている。このような取扱いはマレーシアに限らず、日本を含め他の国も同様だ。

 つまり、ビザの発行について個別却下であれ大量却下であれ、政府当局はその理由を開示、公表する義務はない。そこで、「理由説明せよ」と責めても大きな意味がなく、当局との関係がギクシャクし修復不能になれば、後日さらなる不利益を蒙る可能性もあるため、なるべく避けたい。

 いってみれば、公権力の行使の適法性を問う行政訴訟を起こしても勝算のない事案は、正攻法は賢明とはいえないのである。

 たとえば、いままさに世界で波紋を広げている米国による中国人の排除問題。トランプ米政権が特定身分(共産党員など)の中国人にビザ発給を一律拒否した場合、理由や合理性を問うなどのことはできない。新規発給どころか、すでに米国に在住している中国人の居住ビザを無効化することまでできるわけだから、外国人としてはどうしようもないのである。

 MM2Hも同じ原理だ。「法」で問題解決ができない事案である。

 「理」の次元からいうと、一斉却下という状況は確かに異常といえる。すでにマレーシアで不動産まで購入してしまった人もいるわけだから、本当に気の毒だ。ただ裏返せば、ビザ発給前の行動はあくまでも、発給を前提に個人個人が行った意思決定であり、個人個人がそのリスクを負担せざるをえない、という合理的かつ冷徹な説明も可能である。政府はそこまで耳を傾ける義務がない。

 折しも新型コロナという異常事態が発生している。マレーシア政府としては、この突発的な出来事を折り込んで政策の見直しを行うといってしまえば、なかなか反論できるものではない。

 このような事態なので、できることは、とにかく情報収集にほかならない。MM2H申請大量却下の真の背景・原因を探り出すことが先決である。いかなる問題の解決もまずは原因の特定に依存しているからだ。いくつかの仮説を立てて、材料となる情報を入手し、原因分析したうえで、適切な対策を打つ。それ以外に方法は皆無だ。

(参照記事:『マレーシア移住は狭き門に、富裕層限定の新制度発表』

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