定年退職・年金生活者とマレーシア移住の関係

 「マレーシア移住ビザMM2Hは、 リタイアメント・ビザ(定年退職者ビザ)」という人がいるが、まったくの思い違いである。

 まず、MM2Hの公式紹介サイトをみても、「定年退職者」云々一言も言っていない。MM2Hを利用する日本人の定年退職者(年金生活者)が多いことから、勝手に「定年退職者ビザ」と位置づけられているだけ。最近公表されたMM2H実施の監査報告書(2002~2019)によれば、2002年MM2H制度が立ち上げられた当時の趣旨、つまり対象者要件は、以下の通りである。

 ● 高品質移住者であること
 ● 条件を満たすこと
 ● マレーシアに居住すること
 ● 高消費であること
 ● 高オフショア収入(高い海外収入)を得ていること
 ● マレーシアで就労せず消費のみすること

 この通り、定年退職者・年金所得者であっても、現地での消費が少なかったり、ギリギリ年金だけの収入・生活だったりすると、明らかに対象者要件から外れている。しかし、制度発足してから20年近く経っても、当局がMM2H保有者の管理を怠り、野放しの「玉石混交」状態になっていた(当局の責任ではあるが)。

 玉石混交。私が差別的な言葉使いをしているわけではない。9月24日、ザイヌディン内務大臣が記者会見での発言のニュアンスをそのまま伝えたまでだ。要するに、「20年近く何も手をつけていなかったので、この際、しっかりリセットさせてもらおう」という趣旨だった。

 さらに、重要なことがある――。

 そもそも、「定年退職」という概念がいつまで続くかも、定かではない。そうした危うい時代になってきたのである。特に日本のような国。年金がどんどん目減りしていき、定年はどんどん先延ばしにされる。近い将来に、ヨレヨレな日本人老人がマレーシアの街頭をさまよえば、クアラルンプールが第二のマニラにでもなったらオチだ。マレーシアはそんなカオスさを求めていないはずだ。

 リタイアメント、定年退職やら年金生活やら、すでに時代遅れの概念になりつつある。将来の社会は、現役死の社会だ。外国人はどーんと金をもってこい。事業を起こして雇用を創出し、税金を納めてくれなければ、来るなと、当然である。国家として当然の要望であり、政治家の責任所在でもある。

 だから、マレーシアはもう、シルバー楽園ではなくなったのだ。われわれはしっかり理解する必要がある。わずかな生活費をマレーシアに落とすだけで、デカイ面をしていられないし、自惚れは失笑を招くだけ。

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