転落重傷労働者の一族郎党座り込みで見る中国の病み

 読者の投書を転載します。

 夫の会社でも、労災事故があり、外注の労務者が工事現場の4階から墜落し、瀕死の重傷を負いました。原因は、まったくの本人の不注意でしたが、夫は、人道的に対処していました。彼の命を助けるためにかかった医療費の内、中国の医療保険でカバーできたのはたった2千元。あとの2万元近くは会社が負担しました。(つまり、保険をかけても命は助からないということ)にもかかわらず、彼は退院後、春節だというのに郷里から一族郎党引き連れて会社に座り込みにきたのです。もっと補償金をくれといって・・・彼らが貧しいのはわかりますが、こちらの誠意ある態度に、こんな野蛮なやり方しかできないなんて、なんだか、この国の病を見た気がしました。結局最後は夫に説得され(この寒い中、田舎の年寄りまで巻き込んで、恥ずかしくないのか?)、帰っていきましたが。まかり間違ったら、殺されていたかもしれないのでしょうか?割りに合いませんよね。

 よくある話ですよね。原因は、三つあります。

 (1)国は、社会コストを企業負担に押し付けている。本来、社会安全網で弱者保護しなければならないもの、その責任を企業に転嫁しているのです。そのうえ、「労働契約法」のような法律で、労働者権益保護を謳え、「文句があったら、お宅の会社に言え」というのです。この国自身、本当に労働者を守っているのかと聞きたくなります。

 (2)文化大革命が、中国人の道徳観を酷く傷つけました。これは数世代に引きずります。「お金は、取れるところから取れ!」という「強者いじめ」がその好例です。中国の新聞を読むと、「ポルシェ車が貧困のウエイトレスを轢いた」というような報道が目に付きます。いかにも、金持ちへの怒りを煽ぐ報道ではありませんか。ポルシェだろうと国産車だろうと、人を轢いたら罪は同じだ。いつまでも、「農民蜂起」のような気勢作りに熱中していたら、大人になれません。

 (3)法治社会ではないことが致命傷。法律で問題を解決できない問題が一番大きい。法律で問題を解決できないと、他の手段に訴えるのが必至です。上記の事例もそうです。

 今の中国は、もう、欠けているのはGDPではない。それよりも、経済発展に釣り合わず、大幅に出遅れた法治社会、道徳社会の構築ではないでしょうか。この病みを早く是正しないと、決して将来は明るくありません。

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