社交活動濃密化、コロナ終息ムード漂うなかの危機

 悪い予感がある。

 ――コロナ規制がどんどん緩和し、マレーシアは完全に開放ムードに入った。10月18日から、産業中心地でもっとも人口や活動の密集する首都圏は、「国家回復計画」第4段階に移行すると政府が発表した。第4段階は完全開放の一歩手前で規制がもっとも緩い段階である。

 大きな理由・根拠は、感染者・重症者の減少とワクチンの高い接種率。ここのとこ、1日あたりの感染者数は一時2万人を超えたところから、3桁に減少し、重症者も減り、病床逼迫も解消した。さらに、マレーシアの成人の9割以上は2回のワクチン接種が終わっている。

 あらゆる状況は、楽観的だ。しかし、はたしてそうなのか。

 私の知る限りの話では、マレーシア在住日本人のコロナ感染、身の回りに多数報告されている。ワクチン接種済みで気が晴れてわいわいと会食したらブレークスルー感染したり、ホームパーティーでホスト家族全員感染し旦那が急死したり、ほとんど社交の集いが発端。

 「2回接種完了」をまるで一段と高い社会的地位でも手に入れたかのように誇示し、少数の未接種者のことを「可哀そうね」「さぞかし生活は不便で辛いだろう」と同情する。その同情はまさに裏返せば、一種の優位性の自己確認にもなろう。ただそれは未接種者層の目線でもなければ、接種済層「全員」の目線でもないのだ。

 接種済みのマレーシア人でも、許されたはずの外食や旅行を控え、基本的に従来通りの巣ごもり生活を続けている、そうした冷徹な人も多い。「今、はしゃいでいる人たちは、1つのグループで、私たちとは違うグループだ」と明言するローカルの人もいる。要するに、社会が2つの層に分断しつつある。

 長い巣ごもりから解放されると、気分が高揚する。接種済みでリベンジ的に活発的に社交活動に回帰するというホット層とそうでないコールド層(接種済と未接種を含む)が分かれる。どんな社会でもおそらく似たような状況だろう。

 ブレークスルー感染はまだしも、問題はコロナはこれで終息するかだ。様々な情報がこれを否定している。知り合いの専門家に聞いても、必ず次の波がやってくると言っていた。

 ウイルスは弱毒化しているし、重症も死亡も減っている。すぐ経口薬も出てくるから、もうこれで終息するだろう。果たしてそうなるのか。誰も知らない。そうなるだろうというが、そうならなかったら、どうする?私は職業柄、最悪シナリオを描く側で、そういうところは大方の人に嫌われがちだ。あえて最悪シナリオを描いてみたい。

 マレーシアの場合、第4段階の先には、2つの可能性がある。従来のノーマルに戻る、または悪化して第3段階ないし第2、第1段階に逆戻りする。政府は、「もうロックダウンはしない」といっている。しかし、この約束を覆す可能性はあるかというと、ある――。毒性の強い次世代変異種が生まれることだ。

 私は、悪い予感がする。

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