狙い撃ち、消費者はこうやって自滅する

<前回>

 不必要な「付加価値」消費の減少、「付加コスト」の削減は、個人や世帯の財政健全化につながる。その実践からある「重大な発見」があった――。不必要ならまだしも、その中に有害な成分が含まれていることだ。

 不必要なものを必要と思わせ、欲求を掻き立てるというのは生産者側のマーケティングだ。欲求を掻き立てるには、どんなことをしているかというと、生産者は消費者の「欲求」を実によく研究するのだ。

 食べ物を例にすると、「美味しさ」を求めるのが人間の欲求だ。食感とは、食物を飲食した際に感じる五感のうち、歯や舌を含む口腔内の皮膚感覚を指す。具体的には口当たり、歯ごたえ、舌触り、喉越しなどがこれにあたる。

 たとえば、ふんわりとした口当たり、シャキシャキした歯ごたえ、サクッとした歯ざわり、なめらかな舌触り、つるりとした喉越しなど、美味しさの大半は、食感によってもたらされている。しかし、自然な食品は生まれつきでそんな豊富な「食感」を出してくれるものは少ない。

 すると、人工的に作り出すしかない。興奮惹起といって、カリッ、パリッとした歯触りと摂取音声、柔らかい、クリーミー、口の中でとろける…、食感を出し、食欲(欲求)を刺激する要素を増やしたのは加工食品である。

 まだまだある。リピート消費を促すためには、依存性増大、脳が食べ飽きないように興味を引き続ける要素を増やす。さらに、満腹感遅延、満腹感を得るまでにかかる時間を増やす。このように食品会社は数百億単位の資金を投下し、研究活動に取り組んでいる。

 人工的な成分は有害だといったら、食品会社が「うちはすべて法律基準をクリアしている」と怒って反論するだろう。法律だって人工的に作り出したものだし、そうした人工的な成分を摂るより摂らないほうがいいに決まっている。さらに多量摂取や反復摂取となると…。

 ここまでいうと、いかにも加工食品や食品会社を批判するトーンになってきたが、とんでもない。まさに食品会社が主張しているように、法律基準を守って製造し、市場に送り出したあらゆる製品は批判に値しない。需要があっての供給、消費者があっての生産者。資本主義の市場原理である。

 結局、自身の欲求を制御するか放縦にするかの選択権は、消費者側にあるのだ。堕落した人が誘惑を批判するのは筋違いだ

 結果的に、世間の大半の財・サービスは不必要なもので、消費者の欲求を掻き立て、増殖させ、肥大化させた、生産者の研究開発・マーケティングの結実である

 世間の大半の人間は、自分の欲求をコントロールする能力に欠けているというよりも、将来に希望を持てず、「いまを生きる」という風潮に流されているだけだ。だから、儲かる商売のほとんどは無思考・無自覚の大多数、つまりB層を相手にしている。

 その先は見えている。経済格差よりも、知的格差によって本質的な分断が形成される。

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