マレー半島北部の旅(5)~アロースターのタイ料理店

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 ケダ州の至る所にタイの面影がみられる。まず「Naka」や「Nami」「Wang」といった地名からしてタイ語がそのまま使われている。州都アロースターのバライブサール(Balai Besar)は1898年に建てられた王族の公式行事ホールで、シャム建築の影響を強く受けていた。

バライブサール(Balai Besar)

 歴史よりも今。アロースターに多くのタイ人がタイ料理店を経営し、生計を立てている。そのなかに長期滞在や永住者もいれば、普段はアロースターの街に住み、週末にタイに帰郷する人も少なからずいるという。早速、タイ料理が食べたいので、「5 Utara」という店に出向く。

 経営者もほとんどの従業員もタイ人。片言の中国語(華人客が多いようだ)以外に英語もあまり通じない。中国人同様、タイ人もビジネスは家族や同胞という限定的な内輪コミュニティに依存している。言語の問題もあろうが、独自のルールが通じ、取引コストの最小化につながるからだ。

 外国人客であるから味がマイルドにされては困るので、「容赦なく、ホットスパイシーにしてくれ」と何度も何度も念を押す。運ばれてきたトムヤムクンは辛い!容赦なく辛い!汗が吹き出る。熱帯暮らしは、辛い料理でいっぱい汗を出してこそ健康が保てるのだ。

 鶏のタイ風唐揚げ。これもナンプラー唐辛子を別途つけさせる。ウクライナ戦争の影響で、穀物飼料の供給不足によって鶏の値段が高騰し、マレーシアは国内消費分を確保するために鶏肉輸出を全面的に停止した。シンガポールでは国民食の「チキンライス」が大打撃を受けるなか、こんなに安くて美味しい地鶏が食べられて幸せだ。

 最後に定番の蒸し魚。これも1匹40リンギット(約1200円)と安い。肉厚が厚くて激旨。普段あまり食べないタイ料理だが、国境の街アロースターで食べてみるとこんなに美味しく感じるのだ。

 ご馳走様でした。

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