上海の日本料理外食業界では、大きな変化が見られるようになった。かつて一世を風靡した「食べ放題、飲み放題」系が下火になり、最近、品質の高い専門店がずいぶん増えた。
私は個人的な嗜好からいえば、「食べ放題、飲み放題」系が好きではない。安さで競い合うなか、合理的な利益の確保に、材料や調理、サービスの劣悪化は必至だ。日本国内でもそうだ。全面的なデフレ、価格を落とさなければ売れない時代とメディアが言っているが、大きな間違いだ。過当な価格競争は、企業の合理的な利益を食いつぶしている。これでは、良い商品がどんどん市場から消えて行く。これはデフレの一番怖いところだ。
良いものは、値が張る。当たり前のことだ。これっぽっちの値段しか売れないのか、倍を出すから、どーんと美味しいのを出してくれ、値段で文句を言う客がいたら、追い出せというのが私流だ。
ここ「安達」も、上海では美味しい店といえる。美味しく食べようと思えば、一人500元を出さなければ無理だ。500元だから高いということは言いたくない。これは、店のご主人に失礼だと思う。高級店では、お客さんがよく「高いけれど、美味しい」というが、これも言いたくない。値段の「高い」「安い」とは、金額そのものではなく、バリューの評価で、バリューを上回る料金設定は「高い」といって、逆の場合「安い」という。
そういう意味で、上海の数店舗しかない秀逸な日本料理専門店は、いずれも安い。なぜなら、大衆向けのチェーン店より利益が出ていないからである(私の試算と推測だが)。儲からなければ、どうやってどんどん良いものを作り出すのか。だから、儲かってほしい。少なくとも、ジャンクフードを世に送り出す経営者より儲かってほしいと密かに私が願っている。
「安達」は、完璧ではない。けれど、上海では、かなり秀逸な店といえる。これは凄いぞという一品はないものの、平均的に合格ラインをクリアしている。どの一品も味がしっかりしている。ハイライトを紹介すると、刺身の場合、トロよりも赤身が素晴らしい。日本でもなかなか食べられない味だ。焼き魚も最高だ。
欠点といえば、日本酒のバリエーションは、あまりにも平々凡々で個性がないことと、サービススタッフの自主性の不足くらいかな。
私が通っている料理店は、いずれもデカデカと広告をやらない店ばかり。広告料を削って、料理にコストをかけることは、客の利益になる。美味しいものにありつくために、それなりの努力を払うのが消費者の義務だ。
★くずし割烹・安達
<住所> 上海市閔行区古羊路461-463号(×姚虹路)
<電話> 021-5477-8937
<営業> 17:30~23:00
<予算> 500元~800元/人