【世界経済評論IMPACT】円安・給料安・物価安・資産安、廉価国ニッポンの先

 ついに、1ドル140円突破。円安が急激に進んでいることで世間が騒いでいる。しかし、視野を広げて40年スパンでドル円相場を眺めていると、2022年に入ってからの円安は取るに足らないほど微々たるものであることがわかる。

 大方の評論家やメディアは、日米金利差を取り上げて円安を論じている。確かに金融という技術的な視点では、金利差が主因といえる。ただそれが唯一の原因ではない。いや、むしろ時間軸のスパンを広げてみると、少しずつ異なる風景がフェイドインする。

 30年間日本人の給料が上がっていない。額面ベースの話だから、実質的に下がっているわけだ。かといって、日本人は貧しくなったものの、すぐに困窮するわけでもないし、なんとか食いつないでいる。それは日本の物価がそれほど上がっていないからだ。

 日本人は「安い」ことを善と解釈し、限りなく安さを求めてきた。物事の価値をさほど考えず(考える能力も衰えた)に、価格だけにフォーカスし、価値の高い財・サービスに対しても、安くしろという非常に失礼な姿勢を取ってきた。

 市場経済のなか、需要に供給が合わせる。供給側は限りなくコストを下げ、辛うじて利益を確保(赤字も珍しくない)しながら、安さを競う。しかし、日本人は1つのことを忘れている――。コストには人件費が含まれている。物価の安さで自分の給料も釣られて安くなるのである。

 ブラック企業の肩を持つわけではないが、彼らもコスト削減を強いられて労働者搾取せざるを得ない。サービス業なら「笑顔」はタダではない。感情労働は確実にコストである。しかし、それが大方の日本人に「無料」と勘違いされている。

 そんな日本は、世界の版図に嵌めてみると、紛れもなく「安い国」である。世界第3位の経済大国に分不相応な安さで異様な存在になっている。さらに政府の借金が膨大で、札が撒かれてきた。そういう意味で日本円という通貨も実態よりはるかに安くなるはずだ。

 日本には、価値を下回る価格で売られるものが溢れている。これは金を持っている外国人にとって魅力的だ。そのうえ、円安が進めば、当然買いに出るわけだ。観光や買い物だけでなく、資産(不動産、企業、事業)も対象。特に資産の場合、買い手は円がもっと下がるとみて今は買い控え、虎視眈々と時機到来を待っているのだ。

 でも、悲観する必要はない。これは国家レベルの話だ。日本人の一人ひとりが自分や家族の命運を国家に託すことなく、正しい自助努力すれば、滅びるわけではないし、むしろチャンス到来と捉えることもできる。

 愛国心とは、国家に命運を託す依存心ではない。逆だ。経済的依存を断ち切って、自立してサバイバルする力を持つ日本人が増えれば増えるほど国家が強くなる。国は方舟をつくってくれない。方舟をつくるのは自分だ。

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