3000元の日本料理。これは、10人ではない。お一人様のお値段ですよ。
キッコーマンは、上海万博の日本産業館に料亭「紫 MURASAKI」を出店し、一食3000元の懐石料理コース(完全予約制)を供する。調理は、京都の料亭「菊乃井」「たん熊北店」「魚三楼」から招聘した料理人が担当するという。
金額は目玉が飛び出るほど高いが、それに見合った品質の料理であれば、文句なしだ。それにしても、高い印象は払拭できない。早速、相場を調べて見ることにした。どう調べるかというと、料理を担当する「菊乃井」「たん熊北店」「魚三楼」三店の日本国内の料金を調べるのだ。すると、以下の結果を得た。
● 菊乃井本店: 懐石(夜) 15,750円~25,250円 (平均20,000円)
● たん熊北店本店: 会席料理(夜) 15,750円~26,250円 (平均21,000円)
● 魚三楼: 京料理御会席(夜) 10,500円~26,250円 (平均18,000円)
三店の懐石コース(夜)の平均相場は2万円。それに対し、万博会場では3000元、つまり、4万2000円と倍以上の料金設定になっている。
さらに、日本料理の最高峰である「吉兆」の料金を調べて見た。吉兆嵐山本店の懐石コース(夜)は、36,750円と42,000円になっている。
つまり、万博会場の日本料理「紫 MURASAKI」は、「吉兆」と同一レベルの料金設定になっている。ここまでくれば、献立だけではない。食器やもてなしの礼儀作法ももちろんのこと、生け花、建具や調度品などを一期一会その場の雰囲気や季節に応じて変える「室礼」に至るまで、すべて一流でなければならない。
コストパフォーマンスはどうだろうか。ここではコメントできない。私が「紫 MURASAKI」には行っていないし、行く予定もないからだ。
同店のニュースリリースを見ると、次のように記されている。
「『中国2010年上海万国博覧会』は、世界が注目する国際的なビッグイベントであり、キッコーマングループが経営理念としている『食文化の国際交流』をすすめる絶好の機会ととらえています。料亭『紫 MURASAKI』で本格的な懐石料理を体験していただくことにより、中国の皆様に日本の食文化への理解を深めていただきたいと考えています。皆様のご来店をお待ちしております」
明らかに、中国人客をターゲットとしていることが分かる。さてさて、中国人客は来るのだろうか。
私はある中国人に次の質問をしてみた。
「仮に、あなたの自腹ではなく、他人のご馳走になるとしましょう。そこで、二つの選択肢があって、あなたに自由に選んでもらえます。万博会場で3000元の日本料理コースを食べるか、または、高級中華料理店で3000元の中華コースを食べる。さあ、どっちにしますか」
「一人3000元のコースですよね。中華の3000元コースだと、アワビ、フカヒレ、ツバメの巣、山の幸海の幸、贅を尽くして、そう、満漢全席ですよね。日本料理も食べて見たいのですが、やっぱり、中華ですよ」
自腹でなく、他人のご馳走でもやはり中華か。もし、1000人の中国人、いや、100人でもいい。しかもある程度裕福な人にアンケートをとった場合、どのような回答分布になっているのだろうか。大変興味深い。因みに、キッコーマンはこのようなアンケートをとったのだろうか。
中国紙「東方早報」の5月5日付、「上海史上もっとも高価な料理」と題した記事では、「料亭の総支配人柿沢一氏によると、5月と6月の予約はすべて満席」と報じられている。実際に電話してみると、空席があるので、予約を受け付けるとの回答を得ている。
私自分はそこまで大枚はたいて万博まで足を運ぶ時間も予算もないので、金持ちの中国人友人に是非推薦してみたい。さて、食べに行ってくれるのだろうか。