パトンビーチといえば、プーケットの中心地。かつて中国人観光客の大本営でもあったが、今はどうなっているのか。好奇心に釣られてパトンへと向かった。まずは中国語表記の看板に圧倒される。特にシーフードレストラン。
中国語のネット情報を調べると、プーケットのシーフード情報は量も質もダントツ1位。どこそこのレストランの何の魚をどの調理法で食べたら美味しいとか、異なる海鮮市場の買い比べや食べ比べ情報とか、かなりマニアックな情報も手に入る。
しかし今は中国人観光客はいない。中国語を話しているのはマレーシアやシンガポールから来た華人である。中国は「ゼロコロナ」政策をやめない限り、東南アジアの観光市場の本格的な回復はあり得ない。日本も然り。
少しばかり微笑んでいる場所はここ。プーケットはコロナ明けを祝うように、ゴーゴーバーやマッサージパーラーは、大音量のハウス・ミュージックや怪しい照明でパトンの夜を謳歌している。タイ王国の国家的産業である。
パトンビーチからホテルに戻る(ホテル提供の)シャトルバス。案内には21:00出発と書いてあるが、21:05になっても一向に出発する気配がない。私と運転手の会話(英語)――。
「21時出発ですよね」
「いいえ、21:20出発です」
「違うと思います、ホテルに確認しましょうか」
「俺が21:20と言ったら、21:20だ。早くても21:17にならんと出発できん」(なぜ17分か?)
「あっそう、じゃ後でホテルに戻ったらマネージャーに確認しましょう」
「気に食わなかったら、乗らなくてもいい、降りればいい」(運転手は怒りながらも21:09出発)
微笑みの国。微笑みどころではない。喧嘩売りの国だ。今回のタイ旅行でショックを受けた。何があったのか?もしや単に私の運が悪かったのか。
微笑みといえば、マレーシアこそ微笑みの国。タイとマレーシア共に熟知する友人からのコメント――。「少なくとも私にとってのタイは観光地ばかりでなく日常的にまったく微笑ではない。マレーシア人のほうが100倍微笑んでいる」
全く同感。私にとっても日常的なマレーシアが非日常的なタイよりはるかに微笑んでいる。マレーシア人も問題を起こしたりするが、タイ人ほど攻撃的ではないし、逆ギレも少ない。
ずっと考えてきたことがある。デモやらクーデターやら、微笑みの国であるはずのタイはなぜそのイメージと違うのか。プミポン国王はソフトパワーでこの国を抑えてきたが、今は……。王室評論は法律上、差し控える。