家主がやってきた、賃貸契約更新と経済学の法則

 先日書いた、私が住む「賃貸マンションを9500元から6000元まで値下げさせる」の後続だが、週末に家主が来宅して、賃貸契約の更新調印を済ませた。

 手土産まで持ってきた。スイス産のコーヒー。

 「設備や家具、少し古いので、具合の悪いところを全部、直します。立花さんが納得するまで責任を持って直します」

40117_2我が家、賃貸契約付録の現状写真の一枚

 とてもにこやかな笑顔。9500元から6000元に家賃が切り落とされた悔しさはまったく見られない。更新される賃貸契約書には、家主に求められて、条文一つだけ追加された――。「会社の社宅契約だが、入居者は立花家族に限定する」。

 「築15年のマンション、家具類も10年以上経っています。これだけきれいに丁寧に使っていただける方は、信頼できますし、この方にしか物件を貸したくありません。これから、長く長く、住んでください」と。

 私が事前に準備しておいた、「付属設備・家具一覧明細表」と「物件及び設備・家具現状写真」一式を差し出し、実物との照合点検を依頼すると、「いや、もう見る必要はありません」とさっさと署名をした。

 中国の商取引では、騙しなどの不誠実行為が横行している。これは、間違いなく取引コストを引き上げる。「誠実」「信頼」は、この取引コストを低減する。そのときは、その分価格から引かれる。家主の理解は、経済学の法則に合致している。

 信義誠実の原則に基づいた、バリューに見合った価格設定は、取引双方を幸せにする。単なる額面価格の問題ではない。ステークホルダー(利害関係者)全員に最大な幸福を与えるのが、コンサルタントの極意である。

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