白タクのハイヤー化、中国タクシー市場裏風景の怪異

 上海出張中の移動はすべて「一号専車」というハイヤー配車アプリに頼っている。というよりも、流しタクシーはほとんど見つからないし、ホテルの前で待ってせっかく客を降ろしたタクシーでも乗車拒否がしばしば、タクシーを捕まえること自体が現実的ではなくなったからだ。特に朝夕のラッシュ時間帯には絶望的だ。

 タクシーがないわけではない。運転手は流しをやりたくないだけだ。流しよりもタクシー配車アプリ運営会社からプレミアムペイをもらえるメリットが大きいからだ。

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 一般のタクシー配車同様、ハイヤー配車アプリの「一号専車」も大判振る舞いで運転手に「奨励金」をはずむ。御覧のとおりタクシー市場の競争よりもこれはすでに配車アプリ業者の熾烈なユーザー争奪戦となっている。裏の総指揮者はなんとあのアリババの馬雲氏らしい。

 あるハイヤーの運転手によると、「一号専車」を立ち上げて当初3か月だけで10億元の投資は消えていたし、これからさらに20億元規模の追加投資が予定されているという。金額そのものは未確認情報ではあるが、運転手向けの「奨励金」の額や運営状況、車両総量規模から推算すれば、かなり巨額な投資であることは間違いなかろう。

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 巨額投資の目的はおそらく、「支付宝」(アリペイ)ユーザー市場の拡大にあろう。ハイヤー配車アプリの運賃支払いは現金不可ですべてオンライン決済になっている。中でも「支付宝」が推奨されているし、利用は大変便利である。特に狙われているのは50代以上のシニア層ではないかと思われる。ネットショッピング全盛期でも若者ほどパソコンやスマホが得意ではないシニア層はなかなか進んでそれを利用しようとしない。ただ買い物よりも移動はシニア層にとってより切実な問題だ。流しタクシーが減少するなかで、いやでも配車アプリを使わざるを得ない。そこで「支付宝」はシニア・マーケットに切り込む。

 これが馬雲氏の戦略ではないだろうか。

 ただ、このハイヤー配車はかなり問題が多いはずだ。冒頭に適法性の問題だ。いわゆるハイヤーといっても、実際に運営免許を示す「Y」ナンバーを持っている車両はごくわずかな一部だけである。あとは、ほとんど「白タク」ならぬ「白ハイヤー」あるいは「準白」状態だ。某運転手に聞くと、販売価格16万元以上のまあまあ新車であれば、基本的に加盟可能だという。

 私も実際に利用していると、5回中に4回が「Y」以外のナンバーだった。車種もバラバラ、中古に近いフォードもあればピカピカの4WD/SUVもあり、たまに黒塗りのアウディが優雅に走ってくれる。さらに面白いことがある――。道が全然分からない運転手もかなりいることで聞くと日曜ドライバーから転身したばかりだという。これでは少なくとも準白タク状態ではないか。中に、「はっきりいって、われわれは違法運営に近い」とあっさりと認める運転手もいた。

 個人的な印象だが、グレーのイメージが強い。このような非外資系企業が「コンプライアンス」の概念に対する認識はどのようなものか疑問を残しつつも、むしろこのビジネスモデルに順応して法解釈や運用の変更があって、グレーのホワイト化もありえるのではないかと、いかに中国的な感覚が機能してしまうのだ。

 現にアプリ提供業者の直接の商取引相手は車リース会社やタクシー会社であれば、どのような車両や運転手を使うか、その辺の法的責任や義務は射程外であろうから、むしろ車両を管轄する業者の審査にかかわってくる。ただ、結果的に、オンライン決済市場の拡大とタクシー市場の歪み、これは相殺できるものかという仮説が出てきた場合、どう答えるべきだろうか。いや、そう考えること自体が中国市場では怪異であろう。常識と非常識の世界は怖い。

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コメント: 白タクのハイヤー化、中国タクシー市場裏風景の怪異

  1. 面白いですね。一号専車。

    ネットで調べてみたら、一号専車は、システムを提供しているだけなので、アプリ提供側は、(現時点では)違法性を問われないのだそうですね。

    車両提供側は、タクシー会社やレンタル会社?に所属しないと違法になるという取扱いのようです。

    1号○○的なサービスは提供会社が増えていて、提供会社によってお金の流れも違うようです。

    1号専車では一旦お金がシステム側に入ることから、加盟に一定の基準を設けることができ、完全な私用車の加入をある程度防げるようです。(私用車でもレンタル会社?に所属すれば違法ではないようです)。

    一方、1号快車のほうは、お金はシステム側に入らないらしく、その分管理も行き届かず、質が悪く、違法な私用車が参入しやすくなっているらしいです。

    その分、普及度が高いのかもしれません(未確認)が、各地方で問題の種となっているようですが、現在のところ、国家的な対応はなく、地方ごとでの対応になっているようです。

    そもそも、中国では大都市ですら白タクがかなりいますし、地方では白タクなしでは社会が成り立たない有様ですから、国家的な対応は難しいでしょうね。たいがいの地方では、タクシーどころか、バイタクすら管理できていませんから、統一的な管理はいつになるやらというより、ありえないと言うべきでしょうか。

    私も今度1号○○サービスを使ってみることにします。

    1.  小杉さん、話を聞くと、まず免許所有会社にぶら下がるかどうか、次にその車に専用ナンバーを取得するかどうか(ドライバーの営業免許も)、さらに免許所有会社自体この形態の営業ができるかどうか(要するに月極めリース会社は散発的な市内短距離タクシー業務ができないという説もある)・・・。かなり複雑です。何よりも運転手写真付きの運営証を見たことがないので・・・。おっしゃるとおり、統一的管理は難しいでしょうね。そのうち、タクシーの客が奪われ、タクシーがストライキをやり出したら、取り締まるかもしれません。ただ、目的はオンライン決済口座の拡大なら、いざ半年1年後一斉取締が入っても、業務を打ち切ればそれでいいという発想があるのかもしれません。

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