「羊大爺」が変わった、古き北京の要素が消える無機的な街へ

 羊肉しゃぶを食べたいので、北京出張中には「羊大爺」へ行く。

 「羊大爺」は変わった(参照記事:2010年3月1日付け「湯気、羊肉、白酒、北京の冬物語」2013年12月1日付け「羊しゃぶしゃぶ色々」)。

 庶民的な店ではなくなった。場所は麦子店西街の高級住宅街の一角に移って、店構えも金ぴかで立派なものになった。がっかりした。羊肉しゃぶという庶民的な食べ物の専門店を、なぜこんなバブリーなムードにする必要があったのか。昔のほうが自然体で良かったのだった。

 運営スタイルも変わった。メニューの品数が激減し、私の好物だった脳みそやレバー、ホルモン類もほとんど姿を消し、単純な数品目のいわゆるメジャーに絞り込まれた。

 注文形態もオーダー取りから、「カジノ・チップ式」に変わった。店頭に展示された料理やドリンクのサンプルの前に置かれたチップを取り、テーブル番号と一緒にスタッフへ渡し、注文する方式になった。完全な省コストの経営合理化が施されたのである。

 なんと味気のない店に変わったのだろう。もう二度と行くことはあるまい。現代都市北京に「相応しくない」古き要素がどんどん除去されるこの街もいつか経済的合理性だけが目立つ、無機的なものに変わったのである。

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