中国発「新アヘン戦争」に、米国は敗色濃厚

 昔、中国が西洋人の仕掛けたアヘン戦争に負けたが、今は中国発の「新アヘン戦争」に西洋人が負けようとしている。

 2023年3月の最新統計によれば、TikTokの米国人ユーザーは1億2000万人。その半数以上が18~34歳までの若者で、毎日1.5時間以上、フェイスブックより50%も多くの時間をTikTokに費やしているという(2023年4月4日付マレーシア南洋商報)。要するに「中毒状態」だ。そういった意味で「アヘン効果」があるわけだ。

 バイデン政権は、TikTokを使っていると、データを中国に抜かれるから、国家安全保障上のリスクだと言っている。米国人の大半(52%)もTikTokを「国家安全保障上のリスク」と認識している(2023年3月3日付ニューズウィーク誌)。一方、1億2000万人の米国人ユーザーのほとんどがTikTok禁止に反対だ。

 アヘンに似ていないか。国がアヘンを禁止しようとしても、国民の多くは「アヘン中毒状態」に陥っていて禁止に反対すると。それは確かに「国家安全保障上のリスク」といえる。つまり、リスクの元が何かというと、データを抜かれる云々よりも、国民大衆が中毒状態でアホになるからだ。

 正直、TikTokのようなものでイデオロギーの洗脳、プロパガンダを行う必要はない。大衆が貴重な人生の時間資源をあんなくだらないSNSに潰してくれれば、目的達成だ。愚民化のツールには、TikTokが最適だ。ただ、本当のことをバイデン政権が言えない。国民に「お前らが馬鹿になるから、禁止する」と言えないのが民主主義制度の悲劇だ。

 繰り返してきたように、民主主義も独裁専制も、愚民はいつまでも愚民で変わらない。ただ、独裁専制は愚民を制御するうえで、アクセルとブレーキの両方を使い分けているが、民主主義はアクセルのみで、愚民の暴走を抑制するブレーキを持ち合わせていないのだ。

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