台湾(10)~朝からB級全開、台湾式朝食は鹹豆漿から始まる

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 1日1食派の私は、旅行中だけは例外で、2食ないし3食を食べるようにしている。台北の朝は早い。なんといっても台湾式朝食を食べずにいられない。朝からタクシーを拾って、台湾人友人に紹介された「世界豆漿大王」へ向かう。

 台湾式朝食の定番といえば、鹹豆漿(シェンドウジャン)。甘くない、塩味の豆乳とは、どういうものか。日本人に馴染み薄いが、豆乳よりもスープ、台湾版味噌汁と言った方がわかりやすい。豆乳スープに醤油、ラー油、お酢、油条(ユウティアオ=揚げパン)、菜脯(ツァイポー=たくあん)、ネギ、小エビなどが入っている。具材の組み合わせと味は、お店によって異なる。

鹹豆漿(塩味豆乳)

 台湾の朝食専門店の多くは、店名に「豆漿」が入っている。豆乳はあくまでも、メインであり、そのほかに何か1品の主食をつけるといった具合だ。主食とはまず、焼餅と蛋餅が挙げられる。「焼餅(シャウビン)」は、専用の釜で焼き上げられてパンのようなもっちりした食感で、中に油条や卵焼きを挟んで食べるのが一般的。「蛋餅(ダンビン)」は、小麦粉で作ったグレープ生地に、卵やハム、チーズ、ウィンナーなど好きなものを巻いて食べる。

焼餅(左)と蛋餅(右)

 日本人にあまり知られていないのは、「飯糰(ファントァン)」という台湾式もち米おにぎりのことだ。見た目では少々重く感じるかもしれないが、実は美味しくてペロリと食べられてしまう一品である。おにぎりと言っても、三角形ではなく、細長い形になっている。中身は、油条や肉鬆(ロウソン)、菜脯(ツァイポー)、卵などが入っている。好みによって、肉やチーズに取り換えることもできる。

飯糰

 小籠包は、一般的な朝食ではないが、日本からの来客に食べさせたいので、注文してみた。小籠包といえば、「鼎泰豐」(ディンタイフォン)。「鼎泰豐」の小籠包は、皮が極薄で好評だが、私からいえば薄すぎ、洗練され過ぎていて魅力を感じないのである。庶民派の厚皮が逆に魅力的。この店は厚型なので、好みだ。

小籠包

 朝からB級尽くしで幸せ。私がB級グルメに拘る理由は以下だ――。A級は、お金をたくさん出して美味しいものが食べられて当たり前。外れたら不運不幸だ。B級は、お金を少なく出して普通の食べ物しか食べられないのが当たり前。美味に当たったら幸運幸福だ。B級の方がリスクが少なく、費用対効果のパフォーマンスが断然良いからだ。

 私は30代から40代までは、A級を好んだ。その前半は、もっぱらの虚栄心。頭が空っぽで可視的なステータスシンボルがほしかったからだ。俗っぽくて振り返れば赤面する。後半は、悟りの数年だった。A級を食べて感動が薄れ、脱力感すら持った。そこでB級の世界に突入し、開眼した。B級の世界は、余りにも奥深くて広い。

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