賃上げは良いことか悪いことか

 人件費コストの急増が、在中各社で問題になりつつある。いや、大問題になりつつある。

 当社エリス・コンサルティングでは、本年度大幅賃上げを実施した。従業員間では大きな格差をつけての賃上げで、成果評価で50%アップのケースも。顧客に指導していることは、すべてそのまま社内で実施している。企業の規模に関係なく、原理は同じだ。

 毎年の増収増益が昇給の原資になっていることは、言うまでもないが、労働生産性をとことん追求し、企業文化として定着しつつあることが大きく寄与している。ブログにも書いたとおり、当社は規模拡大反対主義で、決して支店を出さない。増員も最小限に抑え、一人当たりの生産性と所得最大化を求める。

 人件費増で困っている日系企業には、常に常に言っていること――「一人当たりの生産性重視」。人材を流出させつつも、せっせと募集採用に精を出している会社が多い。新規募集だと、賃金の時価相場でどんどん給料提示を上げなければ、人が集まらない。すると、既存社員がそれを見て不公平を感じ、モチベーションの低下につながる。そのほかに、流出による教育研修投資の無駄がさらに大きい。いわゆる人件費のインフレと仕事品質のデフレという悪循環に陥る。

 日本本社が不況のなか、中国現地従業員の急激な賃上げでは具合が悪い。そこまで言ったらもう私から言うことはない。経営よりも、社内政治先行だ。

 5000元の従業員が5万元を稼ぐ。1万元の従業員が8万元を稼ぐのなら、1万元に昇給したほうが良いに決まっている。賃上げが問題ではなく、生産性が問題なのだ。

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